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借金問題

当事務所は、平成7年に開業し、その直後からいわゆる「サラ金問題」に取り組んできました。その後、ヤミ金融の問題や「目ん玉売れや!腎臓売れや!」と、借り主を恫喝した録音テープがニュースになったことで表面化した商工ローン問題などの社会問題に対峙してきました。

また、個人再生手続きが創設され、さらに最高裁判決による過払い請求に対する対応の劇的な変化という、この分野について時代の変遷に遭遇してきました。

現在は、いわゆるグレーゾーン金利が廃止され、貸付け利率が利息制限法に一元化されたものの総量規制は形骸化しており、不動産所有者や比較的安定収入のある人をターゲットに100万円以上の無担保としては大口の貸付けが行われるなど、借金問題がこの世からなくなる時は永遠に訪れないことを実感しています。

当事務所は、これまで以上に研鑽を重ね、借金問題に関する相談や法的な処理に対応していきます。

任意整理

任意整理は、裁判所を通さず、司法書士または弁護士が直接債権者と交渉し、利息制限法による元本の確定、将来利息の免除、分割返済の内容により裁判外の和解を行います。

任意整理は、破産や個人再生と異なり、必ずしも全ての債務を手続きに入れる必要はありませんので、ローン中の自動車を残して手続きを行ったり、勤務先や保証人のいる債務を除外したりして手続きを行うことが可能です。

任意整理は、個人再生のように強制的に債務額を減額できるものではなく、将来的な利息やこれまでの延滞金の免除を求めるものですので、借金の金額によっては、毎月の支払額を大幅に減らすことは困難になります。


個人再生手続き

①「個人再生手続き」とは

事例をご覧ください。

個人再生手続きは、住宅ローン以外の借金の元金を減額させて、借金を計画的に返済することにより整理する手続きです。個人再生は専門的知識が必要になる複雑な手続きです。経験豊富で専門的に多重債務に取り組んでいるみらいリーガルオフィスにご相談ください(茨城県または近県の方)。

個人再生の手続きには、自営業者を想定した小規模個人再生と、サラリーマンなどを想定した給与所得者等再生の2つの手続きがありますが、給与所得者等再生では返済金額が高くなる場合があるため、サラリーマン等の給与所得者であっても、小規模個人再生の申立てをするケースがほとんどです。

個人再生手続きは、特に、住宅ローンの他にも多重債務を抱えてしまった方に有効な手続きですが、住宅ローンを抱えていない方でも利用するメリットが数多くあります。

②住宅を所有している場合

住宅を所有する人は、破産をすると自宅を失うことになりますが、住宅ローンを除く借金の一定割合を返済するという内容の再生計画案が認可されると、自宅を所有したまま借金の整理ができます。
 住宅ローン以外の借金を返済する金額

小規模個人再生の場合、一定割合の債権者の「不同意」により、手続きが不成立(廃止)となってしまいますが、クレサラ業者については、不同意を出す債権者はほとんどおらず、給与所得者であっても小規模個人再生手続きを利用するのが一般的です。

また、住宅ローンの支払いが遅れている場合など、再生手続きの中で、住宅ローンの支払い方法の変更を行うことができます。例えば、滞納分をさらに分割で返済するようにしたり、支払い期間の延長を行ったりすることにより、毎月の返済の負担をできるだけ軽減し、計画的かつ確実に住宅ローンの返済を行えるようにしていきます。

③住宅を所有していない場合

住宅を所有していない方でも、例えば、生命保険の外交員の仕事をしているなど破産をすると職を失うことになる場合や、破産の主な原因がギャンブルで、免責を受けられない可能性がある場合なども、個人再生により借金の一定割合を返済することで、それらの問題点を回避して計画的に返済する内容の債務整理を行うことができます。ただし、返済する意思がないのに借金をしてギャンブル等に消費し、個人再生の手続きを利用することは、詐欺罪(刑法第246条)に該当し、10年以下の懲役に処せられる可能性がありますので絶対にしてはいけません。

また、一定金額を超える金額(20万円くらい~ 裁判所により異なる)の財産を持っている方が破産をすると、その財産を清算(お金に換えて債権者に配当)する必要がありますが、個人再生の場合は必ずしも清算する必要はありません。例えば、退職金請求権の一定割合(茨城県の場合は8分の1、地域により割合が異なるようです)やローンの終わった自動車で価値があるものは財産となりますが、破産の場合と異なり、個人再生の場合は、必ずしも清算(処分や配当)する必要はなく、また、長期間加入している生命保険も解約する必要はありません。

このように、個人再生手続きは、破産の場合の不利益を回避して借金の整理ができるという画期的な手続きですが、手続きが複雑であるため敬遠する事務所も多く、あまり利用されていないのが実情だと思われます。手続きを依頼した事務所に、無理やり任意整理や破産を勧められ、本来、個人再生によれば計画的に返済でき解決できたものが、任意整理により高額の返済を余儀なくされ結局破綻してしまったり、破産によって住宅を失うなどの不利益を受けたりするなどのケースが見受けられます。

④個人再生手続きの利点

住宅を手放さずにサラ金などの借金を減額できる

万が一、再生計画による支払いができなくなっても、直ちに給料などの財産の差し押さえを受けることがない

ギャンブルや浪費による借金でも手続きが利用できる

手続に債権者全員の理解を得る必要がない

元本を減額できる

財産を清算する必要がない

⑤個人再生の問題点

個人再生手続きは、借金の全部を手続の対象としなければならず、一部の債権者を除外して手続きを行うことができません。これは、破産の場合も同様です。

例えば、保証人がついている借金を手続きに入れた場合、債権者は保証人に対して一括請求をすることが可能になりますので、保証人にその返済能力がなければ、保証人も債務整理や破産等、何らかの措置をとる必要が生じるなど、保証人の理解、協力を求める必要があります。ただし、住宅ローンについては、全額を返済しますので、保証人の関与なくして手続きを行うことができます。

また、勤務先から借入がある場合や公務員が共済から借入をしている場合は、勤務先や共済組合を債権者として扱うことになり、勤務先に個人再生の手続きを行ったことがわかってしまいます。

⑥個人再生による解決事例

(以下の事例は、当事務所において個人再生手続きにより解決した方々のほんの一部の事例で、これ以外の多くの方が、個人再生手続きにより借金問題を解決されています。なお、プライバシーに配慮し、内容の一部を変えてあります。)
事例1  事例2  事例3  事例4  事例5


自己破産

自己破産は、債務者が持っている財産を清算してお金に換え、各債権者に平等に分配する手続きです。しかし、一般的なテレビや冷蔵庫などの家財道具は財産のうちに入りません。したがって、現在、破産の申立てをする方のほとんどは財産が存在しませんので、財産を清算する手続きは行われず(同時廃止といいます)、もっぱら、破産申立ての目的は「免責」を受けて、法的に借金を返済しなくてもいい状態にすることです。

借金の総額が、年収を超えているような方、返しては借りるという自転車操業に陥っている方は、破産も検討したほうがいいでしょう。ただし、以上のような方でも、個人再生などを選択したほうが適している場合があります。


免責について

まず、破産の最大の特徴は「免責」を受けて、法的に借金全額の免除を受けられることです。破産法では、免責が認められない「免責不許可事由」が定められており、ギャンブルや浪費によって借金の多くを抱えた人などには免責を与えないのが原則です。したがって、免責不許可事由に該当する方は、個人再生や任意整理によって、解決を図ることを検討したほうがいい場合があります。しかし、上記の事例に該当する場合でも、よほど悪質なケースでなければ、免責が認められる場合も多くありますので、経験豊富な司法書士などに依頼し、反省の態度を書面に示すなどして免責を得られるような措置をとってもらいましょう。専門家に依頼しないで破産の申立てをされた方が、書類の書き方がよくなかったために、免責が不許可と裁判所から判断され、取り下げを勧告されたようなケースも見受けられますので、書類の作成には注意が必要です。


破産法(抜粋)

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条  裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。

現在、当事務所に相談に来られる方で、免責が得られない可能性がある方は、個人再生の申立ても検討してもらっています。あえて、免責不許可を覚悟してまで破産の申立てをしなくても、個人再生で解決できる場合が多いのです。個人再生の場合は、免責不許可事由があっても手続きを行うことが可能です。しかし、免責不許可事由があっても、失業中であり、かつ、高齢や病気などの理由により就職の目処が立たない場合は、破産の申立てをせざるを得ないでしょう。その場合は、それらの状況を詳細に書面において説明し、診断書等の書類を添付して、裁判所の理解を求めることになります。


保証人がいるけど破産しても大丈夫?

あなたが破産して免責を得られても、保証人の責任は消えません。
つまり、あなたが破産すると、債権者は、保証人に対して請求をします。
したがって、保証人とあなたとの関係や、保証人に請求がいくことになる金額などによって、自己破産を選ぶか否か、変わってくると思います。

例えば、保証人が行方不明で捜索願が出されている、あるいは、この保証人が原因で破産の申立てをせざるを得なくなったなど、保証人の不利益をさほど意識しなくてもいい状況であるならば、破産の申立てをためらう必要はないのかもしれません。しかし、保証人が会社の上司であるとか、義理の親であるなど、「保証人に絶対に迷惑をかけられない」などと考える場合には、簡単には申立てはできないでしょう。

このような場合は、保証人とよく相談をする必要があります。一般的に、あなたが破産をした場合、債権者は保証人に対して残りの金額を一括で返済するよう請求できます。ただし、保証人と債権者との話し合いで、今までどおりに分割で返済していくようにするケースもありますが、その場合は保証人の関与が必要になってきます。

なお、破産や個人再生は、全ての債権者について申立てをしなければなりませんから、保証人に多額の借金をしたことを絶対に知られたくないという場合には、保証人のついている借金を除外した任意整理(または特定調停)を行うしかありません。ただし、保証人がすでに自己破産や個人再生の手続きをしていて保証している債務についても免責や認可を受けている場合には、その債務についても法的に解決済みのはずですので、特に保証人の不利益を気にする必要はありません。


財産(不動産、自動車、生命保険、退職金等)がある場合

(以下の取り扱いは、地域によって異なる場合があります。)
一般的に、ある程度の財産がある場合には、破産以外の方法も検討すべきでしょう。不動産がある場合に破産の手続きをとると、原則的にその不動産の所有権を失うことになります。しかも、原則として、その財産を処分してそのお金を債権者に分配(配当といいます)するなどのために、破産管財人を選任しなければならず、その費用だけでも最低25万円程度の金額が必要になります。

生命保険に加入している場合は、解約した場合に戻る金額(解約返戻金)の明細書を、保険会社から取り寄せ、その金額が財産とみなされますので、20万円を超えるような場合には、裁判所から保険を解約し、各債権者に配当するように指示される場合もあります。また、解約返戻金が、かなりの金額になったり、他の財産と合わせるとまとまった金額になる場合には、破産管財人が選任される場合があります。したがって、そのような場合には、個人再生または任意整理も検討すべきでしょう。

退職金請求権も財産   自動車がある場合


破産したらどのような不利益があるのか

戸籍に記載される、選挙権がなくなる、今後旅行に行けない、パスポートが取れない、テレビや冷蔵庫を持っていかれる、家族全員がその財産の4分の1を失う、通帳を作れない、離婚をしたほうがいいと聞いたなど、相談に来る方は色々な情報を持っているようですが、破産をしても全く上記のようなことにはなりません。ただし、生命保険の外交員など、他人の財産を管理するような仕事は制限される場合がありますが、免責が確定(復権)すれば制限はなくなります。

また、破産をすると「官報」という国が発行する機関紙に、住所、氏名が掲載されますが、これは、もっぱら手続きから除外された債権者の保護が目的で、制裁的な措置ではありません。一般の人が官報を見るようなことはありませんから、あなたが破産をしたことは、あなたが言わなければ、人に知られることはないでしょう。なお、貸金業者を装い官報を入手してダイレクトメールを送りつけてくる詐欺が横行していますので注意が必要です。

なお、過去に破産して免責を受けた人は、その後7年間は再度、免責を受けることができませんが、小規模個人再生の申立てをすることは可能です。
破産事例(競売と任意売却について)


任意整理の費用(着手金は不要です)

 報酬(税抜)
債権者1社につき 基本報酬 5,000円
債権者1社につき(債務額20万円未満) 報酬金 15,000円
債権者1社につき(債務額20万円以上) 報酬金 25,000円
  • 全部で5,000円の通信費をいただきます(6社以上は10,000円)
  • 減額報酬、不透明な諸費用等は一切ありません。
  • 費用は、すべて分割による支払いもできます。
  • 収入が、一定基準以下の方は、法律扶助(日本司法支援センター 法テラス)の費用の立替え制度が利用できる場合があります。詳細は、お問い合わせください。

過払い金返還請求の費用

 報酬(税抜)
和解の場合 返還額の20%
訴訟対応の場合 +5%
基本報酬1社につき 1万円~3万円(返還額による)
  • 着手金は一切不要です。訴訟対応の場合でも、先に実費分をお支払いいただく必要は一切ありません。
  • みらいリーガルオフィスは、一部の業者を除き、利息を含めた全額の返還を受けることを基本としています。

個人再生の費用(認可決定確定までフルサポートします)

住宅(自宅所有)なしの場合報酬(税抜)
着手金 50,000円
報酬金 250,000円
住宅(自宅所有)ありの場合報酬(税抜)
着手金 50,000円
報酬金 280,000円
  • 認可決定(借金の一定額免除)までフルサポート《手続き完了まで責任をもってサポート》します)
  • ご事情により、着手金のアト払いも可能です。
  • 報酬金は、分割による支払いもできます(毎月3万円くらい~)。お気軽にご相談ください。
  • 実費分(印紙代、予納郵券、通信費)として50,000円程度いただきます。 
  • 住宅ローンの支払いが遅れていて、住宅ローンの支払い金額の変更を行なう場合は、30,000円(税抜)程度の加算があります。

自己破産の費用

 報酬(税抜)
着手金 50,000円(応相談)
報酬金 170,000円
  • 免責(借金の免除)までフルサポート《手続き完了まで責任をもってサポート》します)
  • ご事情により、着手金の金額は相談可能です。
  • 報酬金は、分割による支払いもできます(毎月2万円くらい~)。お気軽にご相談ください。
  • 実費分(印紙代、予納郵券、通信費)として30,000円程度いただきます。 
  • 不動産を所有されている場合は、50,000円(税抜)程度が加算されます(不動産査定費用等込み)。
  • 個人事業者の方は、費用が追加される場合があります(5万円(税抜)以内)。
  • 個人の債権者がいる場合は、費用が追加される場合があります。

 


過払い金返還請求の記事①:なぜ、サラ金・クレジット業者から過払い利息を取り戻せるのか。

・グレーゾーン金利の存在

日本には、利息の規制に関する2つの法律が存在します。利息制限法と出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)という法律です。利息制限法は、元本により3つの金利区分を設定してあります。10万円未満が20%、10万円以上100万円未満が18%、100万円以上が15%を利率の上限とし、それを超える利率の契約は「無効」としています。ところが、ある時期までほとんどの貸金業者は、利息制限法の上限利率を超える利息をとって営業していました。つまり、貸金業者は違法な金利をとって利益を上げていたのです。

それは、利息制限法の上限利率を上回る利息をとっても罰則規定がなく、出資法の範囲内の利息であれば処罰されることがなかったからです。この利息制限法を超えて、出資法の範囲内の金利が「グレーゾーン金利」と言われていたものです。以前、出資法は、上限金利を29.2%としていましたので、多くの貸金業者は20%台後半の高金利で営業を行っていたのです。

・みなし弁済規定について

本来、利息制限法の上限利率を超える利息を支払っても無効です。ところが、旧「貸金業の規制等に関する法律」第43条が、債務者が「任意に支払った」などの一定の条件を満たせば、本来無効であるはずの利息の支払いを有効とみなす、という、「みなし弁済規定」を設けていたため、複雑な問題が生じてしまいました。

支払ったグレーゾーン金利の返還請求、つまり過払い請求は、以前から一部の司法書士や弁護士により行われてきたことですが、貸金業者がみなし弁済を主張して争ってくるケースがあったため、専門的な知識が必要で、専門家でも一般的事件として過払い金を取り戻すことは困難な作業であったのです。事実、みなし弁済を有効とし、返還請求を認めない裁判例も数多く存在していました。

・取引履歴の開示について

また、過払い返還請求を行う前提として過払い金額を算出するために、貸金業者から取引履歴を開示させるのも一苦労だったのです。過払い金額は、これまでの取引全ての借入日、借入金額、返済日、返済金額がわからないと算出できません。しかし、契約書や領収書等の書類を、取引の初めから全て保存している借主はほとんどおらず、過払い金額を算出するためには貸金業者から取引履歴を開示させる必要があったのです。

金融庁のガイドラインでは、貸金業者は、借主から請求を受けた場合、資料を開示しなければならないことになっていますが、以前は罰則規定がなく、裁判例も開示義務が「ある」とするものと、「ない」とするものとに分かれていたため、取引の全てを開示する必要はないと解釈する業者や、全く開示しない業者が数多く存在し、請求どころか過払い金の存在すら立証できない状況が続きました。

・2つの最高裁判決の意味

ところが、平成17年に最高裁判所が「貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業の規制等に関する法律の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,その業務に関する帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負う。」と判示し(最高裁平成17719日判決)、貸金業者の取引履歴開示義務を明確にしたのです。

また、平成18年には、事実上みなし弁済規定を無効とする最高裁判決が出ました(最高裁平成18113日判決)。これにより、以前と比較して、過払い金の返還請求が非常に行いやすくなったのです。


過払い金返還請求の記事②:高金利はサラ金だけではない

・クレジットカードのキャッシングもサラ金なみの高金利だった

多重債務者の中には、サラ金=高金利、クレジットのキャッシング=低金利と錯覚している方がいますが、クレジットカードのキャッシングによる借り入れも、大半は、サラ金なみの高金利でした。したがって、過払いが生じている場合は、クレジット会社に対してもサラ金と同様に過払い返還請求ができます。クレジット会社の場合は、開示請求をすればスムーズに開示に応じてくれます。また、最初から利息制限法に基づいた計算書を出してくる業者もありますが、過払い利息は含まれていないため、こちらも再計算が必要となります。

・クレジット会社の場合の問題点

クレジット会社に対しては、上記のとおり比較的過払い請求がやりやすいと考えますが、問題もあります。クレジット会社の多くは、ある一定時期(平成のはじめくらい)以前の取引のデータを抹消したとして、その部分の開示をしない業者がいます。サラ金にも同様の業者がいますが、なぜかクレジット会社の多くが古いデータを消してしまったと主張します。その場合は、推定計算や残高無視計算という方法により、過払い金額を算定して請求することになります。


過払い金返還請求の記事③:取引が終わっていても返還請求ができる

すでに、サラ金に対して全額を返済し現在では取引がない場合でも過払い金の返還請求ができます。逆に言えば、利息制限法による上限利率を超える約定利息に基づく債務の返済を全て終えた場合は、確実に過払いになっているのです。過払い金の返還請求は、権利の行使をすることができる時、一般的には最後に返済したときから10年を経過すると、請求をしても業者から時効消滅の主張をされますが、10年を経過していなければ、仮に9年以上前に完済してある取引でも、過払い金の返還請求ができるのです。なお、今現在取引がある場合より、すでに契約上の利息および元金を全額返済している場合のほうが、一般的に過払い金は高額になります。


過払い金返還請求の記事④:過払い金額の算定

過払い金額がどの程度の額なのか、どのようにして算出すればよいのか、これは、貸金業者から最初に借り入れしたときから最終の取引までの、借入額とその借入日、返済額とその返済日がわかれば算出できます。例えば、平成8年4月1日に20万円を借り入れ、同年5月31日に1万5千円を返済した場合、返済金のうち利息制限法による18%の利息の額は、(20万円×18%÷365日×30日分)として2,958円(借入初日の利息を1日分として算入すべきとする判例がありますが、貸金業者の多くが初日不算入の計算書を出してきますので、当事務所では過払い請求を行う場合、初日の利息を算入していません。)、したがって、元金分の返済が12,042円(15,000円-2,958円)ということになります。

ちなみに、これを約定金利が29.2%ですと、利息は4,800円になり、利息制限法による場合との利息の差額が1,842円で、その分の利息を余計に支払い過ぎていたということになります。

なお、借入額とその借入日、返済額とその返済日を確認するためには、契約書と領収書の全ての資料を保管していなければできません。しかし、取引全てのそれらの資料を保管している人はほとんどいません。そうすると、どのくらい過払い金額があるのか判らず、返還請求をすることができないということになってしまいます。そこで、業者に取引履歴の開示を請求し、開示された資料をもとに過払い金額を算出する必要があります。

以前は、大手サラ金業者でも「3年以前の履歴の開示義務はない」などとして、全取引の開示に応じない業者がほとんどでした。そこで、推定計算などで立証のないまま裁判を起こし、裁判上で開示を主張し争うという専門家でも返還を受けるのに困難を極めるケースも数多くあったのです。しかし、平成17年7月に、最高裁判所が貸金業者に取引履歴の開示義務を認める判断を示したことにより、現在では多くの貸金業者が開示請求に応じるようになったのです。


過払い金返還請求の記事⑤:取引履歴の開示請求の方法

取引履歴の開示請求は、開示請求書を業者に送付します。(書式例 開示請求書)
業者は、開示請求を受けると、自社が保存する取引履歴を開示する義務が生じます。現在では、大手のサラ金やクレジット会社では、ほぼ開示請求には応じてきます。これは、司法書士等の関与なしに一般の方が請求した場合も同様です。平成17年に最高裁判所で、貸金業者には取引履歴の開示義務があるという判決が出る前は、一部の履歴しか開示しない業者がほとんどでした。業者に過払い請求をする場合、正確な過払い金額を確定させることが最も重要な要素であって、その開示請求に応じないため、出だしでつまずいてなかなか前に進めないというケースが多かったのです。しかし、大手のサラ金やクレジット会社について言えば、現在ではそのようなことはなくなりました。

しかし、業者が開示できる取引履歴は、自社が保存してある部分に限り、すでに廃棄したなどとして「ないものは出せない」という主張をしてくる業者がおり、極めて問題です。例えば、ある大手サラ金は、平成5年以前のデータは全て廃棄したとしてそれ以前の履歴は一切開示してきません。また、同様の主張をするクレジット会社も複数存在します。このようなケースでは、取引の初期を推認できるなんらかの資料があれば、それを基に推定計算などで過払い請求訴訟を提起します。したがって、いつから取引があるか客観的に確認できる資料の存在が極めて重要になってきます。これは、開示請求に応じない悪質な業者に対する対応策としても重要です。それらの資料として理想的なのは、契約書や返済をしたときの領収書などです。また、業者から請求を受けた通知、振込で返済をしていた場合の銀行の振込カードの日付、借入金が自分の銀行口座に振り込まれた場合には口座の記録を調べます。繰り越しした通帳を処分してしまった場合は、多少手数料はかかりますが、金融機関から口座の取引の履歴を開示してもらうべきでしょう。銀行は、10年程度であればコンピュータのデータを引き出すだけなので容易に出してくれます。また、古い時期の取引は、帳簿をいちいちコピーしなければならないので負担が大きいようで、金融機関によっては非協力的な場合もあるようです。しかし、訴訟を予定している場合、「裁判の資料として必要なとても重要なものですのでお願いします。」などと交渉すると、多少時間はかかりますが開示してくれることがあります。

また、履歴自体は廃棄したと主張する貸金業者でも、契約日だけは判明する場合があります。このような場合は、契約日を確認し、その日を最初の借入日として推定計算により過払い金の返還請求をすることになるでしょう。

(書式例 開示請求書)


株式会社アコギ侵犯  御中

平成**年**月**日

 

0000011
茨城県つくば市****
  司法 士郎 ㊞

 

開示請求書

冠省

 私は、この度、貴社に対する債務を利息制限法による再計算を行い、正確な債務額を確定させ、または過払い金の額を確定したいと考えています。

つきましては、貴社との当初からの取引経過の全て(過去に完済分がある場合には完済分も含む)、及び当初の契約関係書類を開示してください。

なお、本書は、民法第153条による催告書面を兼ねるものとします。

                            早々


過払い金返還請求の記事⑥:開示義務に違反する業者に対する対抗手段

現在は、大手のサラ金やクレジット会社は、自社が保存している取引履歴については開示請求に応じてきます。しかし、一部の中小のサラ金業者の中には、過払いである場合、不当に取引の当初からの開示に応じてこなかったり、取引の当初からの開示を行ったように装い、実は借り換えをしたときからの一部の取引履歴を小出しにしたりする業者がいます。「もっと前から取引があるのではないか」と指摘すると、それ以前の取引をしぶしぶ出してきたりします。悪質な貸金業者になると、請求を無視して全く開示してきません。小出しにしてくる業者は、本人の記憶があいまいな場合、本来、過払いで返還請求をできるものが、逆に債務が残っているものとして借主が返済をする和解をせざるを得なくなる場合もあります。このような行為は詐欺的であり、極めて問題であると言えます。

開示された時期よりも前に取引があることが明確にできる何らかの資料が見つかった場合は、その時期を業者に伝えず、単に「もっと前から取引がある」として、全ての開示を求める方法もあります。中には、「何らかの資料があるなら、それを提示してくれれば早く開示できるから」などと、資料を見せるよう要求する業者がいますが、その場合、証拠が存在する時期から直近の借り換え時からの履歴しか出してこないケースが多いのです。

・行政指導の申立

貸金業者が、どうしても全ての開示をしない場合は、その貸金業者を監督する機関に行政指導の申し立てを行い、指導を仰ぐべきでしょう。司法書士などの専門家の中には、行政指導の申し立てをしてもあまり効果がないとしてやらない方もいますが、私の経験ですと、行政指導の申し立てをすれば開示してくるケースも少なくありません。監督官庁は、その業者が都道府県知事登録か、財務局登録かによって異なります。小規模の業者で、本店以外に営業所がないか、あっても同一都道府県の場合は知事登録になり、営業所が他の都道府県にもある場合は財務局登録になります。貸金業者には登録番号があり、契約書には必ず登録番号が記載されています。例えば、登録番号が、東京都知事(1)第12**号は、監督官庁は東京都ですし、関東財務局(1)第43**号は、関東財務局が監督しています。

行政指導の申し立ては、通常、申立書などの書面を郵送で提出して行います。知事登録業者であれば、各都道府県に「金融政策課」などという部署があり、その課長あてに、財務局であれば、財務局長あてに提出して行います。

しかし、それでも開示しない場合は、推定計算や残高無視計算により過払い金額を算出し、過払い請求と合わせて不開示の損害賠償請求を行うことになりますので、経験豊富な司法書士などに依頼することをお勧めします。


(書式例 行政指導申立書)


(行政指導を求める申立書)


関東財務局長 殿  


茨城県つくば市***1-2-3
申立人 司法 士郎 ㊞
電話 090-****-****

 

 私は、平成**年頃に下記貸金業者から金銭を借入、以後、平成**年**月まで、金銭の借入・返済を繰り返してきました。私は、この度、利息制限法により正確な債務額を確定させようと、同貸金業者に対して取引履歴の開示を求めたところ、同貸金業者は、平成**年**月以後の3年分の取引履歴を開示したものの、それ以後の取引履歴を開示しないので、その後、通知により2回、電話により3回開示を求めましたが「折り返し電話します」「時間はかかりますが近いうちに開示します」「担当者が不在でわかりません」などの返答を繰り返すだけで、今日まで一切開示に応じず、また、開示をしない理由の説明なども一切ありません。

 なお、貸金業者には、取引履歴の開示義務があることは最高裁判決により明らかであり、また、金融庁のガイドラインにも明記されているものであります。

 つきましては、同ガイドラインに基づき、私と同貸金業者との金銭消費貸借契約に基づく全取引履歴を開示するよう行政指導されたく、ここに申立てをいたします。

1.貸金業者の表示

      所  在  東京都千代田区***1-2-3 倒産ビル3階

  商  号  酸化ファイナンス株式会社

  担当部署    債権管理課

  担 当 者    不明

  電話番号  03-***-****

  登録番号  関東財務局(5)第00***号

 

2.添付書類  開示請求書         1通

        債権再調査依頼書      1通

以上

 


過払い金返還請求の記事⑦:開示後の処理

開示される取引履歴は、契約上の利息のまま開示してくるケースと、利息制限法上の制限利率に引き直したものを開示されるケースがあります。開示された取引履歴には、利率が記載されている場合が多いのですが、仮に利率が記載されていなくても、最後の取引日の残高をみればどちらなのかは一目瞭然です。利息制限法に基づく計算書の場合、残高が自分が把握している金額よりもはるかに少ないはずで、それがマイナスになっていれば過払いということになります。

業者が、引き直しした計算書を開示してきた場合でも、過払い利息は計算されておらず、過払い金の元金のみの金額が明示されているにすぎませんので、利息を加えた再計算が必要になります。また、履歴が約定利息による計算の場合は、過払い金を確定するために、必ず再計算をしなければなりません。しかし、長年にわたる取引全ての計算を電卓でするのはかなり大変な作業であると思います。そこで、今は非常に便利な計算ソフトが開発されていて、インターネットのホームページから無料でダウンロードもできます。計算ソフトを利用すれば、10年以上にわたる取引であっても、短時間で再計算書ができあがりますし計算ミスも防げます。なお、開示された履歴は、返済したときの領収書など何らかの資料が手元にあれば、それと照合して間違いがないか確認してみましょう。


過払い金返還請求の記事⑧:過払い利息に「利息」を付けて返してもらえる。

過払い金には、過払い金に対する5%の法定利息を付加して請求できます(最高裁平成19213日判決)。貸金業者のほとんどは、任意の話し合いで利息まで返還してくるところはありませんので、訴訟を起こして過払い金及びその利息の返還請求をすることになります。


過払い金返還請求の記事⑨:返還請求書の送付

過払い金額が確定したら、いよいよ返還請求を行います。過払い金の返還請求は、「過払い金返還請求書」などの書面を業者に送付して行うのが一般的です。電話などの口頭で請求してもよいのでしょうが、書面でしたほうが確実に相手に伝わりますし、後日の証拠としても残ります。なお、書類の送り先は、取引のある支店ではなく本社に送付します。なお、本社の所在地は、業者のホームページで調べることができますし、監督官庁などのホームページで検索することもできます。

書類が送られてくると、そこに担当部署と住所が記載されています。また、担当者が記載されている場合もあります。以後は、その部署(担当者)が担当することになります。送られた書類は大切に扱うことを心がけ、必要に応じてコピーをとっておきましよう。

(書式例 返還請求書)

株式会社アコギ侵犯 御中

平成**年**月**日
0000011
茨城県つくば市****
司法 士郎 ㊞
電話 090-***-****

和解申入書(過払金返還請求書)

拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。

 また、この度は、私の債務整理につきまして債権調査にご協力いただきまして厚くお礼申し上げます。

 さて、貴社から開示されました資料により、これまでの貴社との取引について、利息制限法所定の利率にしたがって計算・充当しますと、過払いになっているものと思われます(別紙計算書のとおりです)。上記過払金については全額不当利得返還請求ができることは、幾多の判例によって確立しているところです。つきましては、貴社に対し、前記過払金全額金140万円及び法定利息金40万円、合計180万円の請求をいたします。

本件につきましては、和解が可能な場合には、本書受領後5日以内に貴社のご回答を書面にてお願いします。なお、ご回答いただけなかった場合には、やむを得ず提訴となります。その場合は、遅延損害金や訴訟費用なども請求させていただくことになりますので、念のため申し添えます。

敬具


過払い金返還請求の記事⑩:交渉

返還請求は、書面で通知をする方法により行うのが一般的です。返還請求書に振込先を記載しておけば自動的に振り込んでくれるということなら楽なのですが、残念ながらそうはいきません。業者のほうは、返還請求に応じる意思がある場合でも、少しでも返還額を安く抑えようとして電話での話し合いを求めてきます。

このように、通常、交渉は電話で行うことになると思います。特に、大手のサラ金やクレジット会社の場合は、電話をかけてくるケースが多いのですが、恐れることは全くありません。電話をかけてくるということは、返還する話し合いに応じるというサインだと受け取ってください。また、返還請求書を送っても無視されることも多いと思いますが、そのような場合には積極的に何度も電話をかけて請求することになります。

・どの程度の金額で和解するか。

貸金業者に対して返還請求をすると、必ずといっていいほど過払い金の減額を要求してきます。しかし、過払い金は、法的に全額の返還を受けて当然のものです。少なくとも、訴訟を起こす前であれば、過払い金の元金の全額、訴訟提起後は、元金に利息を加えた額の返還を求め、安易に減額を認めるべきではないと考えます。なお最近は、分割返済の和解を求めてくる業者があります。このような場合は、その業者が倒産した場合のことなどを考え、慎重に対応するべきでしょう。また、交渉に自信のない方は、初めから司法書士等に依頼することをお勧めします。


過払い金返還請求の記事⑪:和解成立後の処理

準備中

過払い金返還請求起訴の記事(1):訴えを起こす

・訴状を裁判所に提出する

請求額が140万円以下のため、簡易裁判所に提訴する場合、口頭での訴えの提起が認められていて、必ずしも書面にして訴状を提出しなければならないものではありません。しかし、訴状を作成して裁判所に提出するのが一般的です。

過払い金返還請求訴訟では、原告(訴えを起こすほう)は、①原告が損失したこと、②被告(業者)が利得を得たこと、③原告の損失と業者の利得に因果関係があること、④業者の利得が法律上の原因に基づかないこと、を主張・立証する必要があるとされています。訴状は、正本と副本の2部作成します。正本は裁判所に置かれ、副本は被告である業者に送達されます。したがって、被告の数が複数の場合は、被告の数+1部を提出することになります。正本、副本といっても、全く同じものを提出すればよいので、ワープロで印刷したものであれば、A4判横書きにし、同じものをプリントアウトすればよいのです。また、訴状は必ずしもワープロで作成したものを提出する必要はなく、手書きでもかまいません。手書きの場合は、鉛筆書きしたものを2部コピーして、それを正本、副本としてもかまいません。よく「正本」「副本」などと書かれたゴム印が押してあることがありますが、必ずしも押さなければならないものではありません。正本には、所定の額の収入印紙を貼りますので、裁判所は一目で正本か副本かの区別がつきます。

訴状には、正本、副本とも引き直し計算した「計算書」を付けます。つまり、訴状の後ろに「計算書」を付けて、ホチキスで綴じます。正本には、所定の金額の収入印紙を貼ります。収入印紙は、絶対に割り印は押さないでください。訴状の一枚目の名前のところに印鑑を押します。印鑑は実印である必要はなく、認印でかまいません。なお、訴状にページ番号があれば、割り印を押す必要はありませんので、訴状の下のほうに「1」「2」と、ページ番号を入れましょう。各ページの上部の空欄に捨印を押すようにしましょう。

このようにしてできた正本、副本のそれぞれに、証拠である業者から開示された取引履歴のコピー、その下に資格証明書として被告業者の代表者事項証明書をクリップなどでとめて完成です。証拠書類には、原告は「甲第1号証」、被告は「乙第1号証」という記載を空欄に入れる必要があります。数字は、提出する順番にしたがって1、2と大きくなります。司法書士や弁護士であれば、「甲第○号証」というゴム印を押し、数字だけ手書きで入れていきますが、「甲第1号証」と全て手書きでも問題ありません。なお、訴状を裁判所に提出する際には、所定の郵券(郵便切手のことです)を提出する必要があります。金額は、事前に訴状を提出する裁判所に確認しましょう。

代表者事項証明書は、法務局でとります。遠方の業者の代表者事項証明書でも、現在は全国の法務局の登記事務がコンピュータ化されているので、最寄りの法務局で取得できます。

証拠となる開示された取引履歴の原本は、非常に重要な書類です。大切に扱いましょう。引き直し計算のため、取引履歴に書き込みなどをしたい場合には、必ずコピーをしてコピーのほうにするようにしましょう。また、取引履歴の原本は、裁判所に出廷する必要がある場合は持参しなければなりません。裁判官から提出を求められる場合があります。もっとも、原本自体がコピーしたものという場合もあります。なお、訴状には、証拠書類の写し(コピー)を付け、原本は保管するようにします。したがって、コピーは正本用、副本用、控え用として、最低三部はとっておきましょう。

(記載例 訴状《過払い利息5%の例》)

訴    状

平成**年**月**日

○○簡易裁判所 御中

原 告   司 法  士 郎 ㊞

 〒○○○-○○○○ 茨城県つくば市***1丁目2番3号(送達場所)
         原  告    司 法  士 郎
             電 話 03-○○○○-○○○○
             FAX 03-○○○○-○○○○
 〒○○○-○○○○ 東京都新宿区西新宿*丁目**番**号
                  被  告    ヘコム株式会社

           代表者代表取締役 屁故無 さげ造

不当利得返還請求事件
訴訟物の価額  140万円
ちょう用印紙額 1万2000円

第1 請求の趣旨

 1 被告は,原告に対し,金180万円及び内金140万円に対する平成19年1月31日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 訴訟費用は被告の負担とする。

 3 仮執行宣言

第2 請求の原因 

 1 原告は,平成5年2月2日に,被告から金員を借り受け、平成19年1月30日に至るまで、後記「計算書」の「取引日」欄・「借入額」欄・「返済額」欄記載のとおり金銭消費貸借取引を行った。なお、計算書は、被告から開示された原・被告間の取引経過に基づき作成した(甲第1号証)。

 2 不当利得

  原告は、被告との金銭消費貸借取引において、利息制限法制限利率を超える利率により計算された利息の弁済を行ってきた。これを利息制限法制限利率により計算し、利息制限法超過利息を元本に充当した結果、「計算書」のとおり、被告は、法律上の原因なくして金140万円を利得し、原告は、同額の損失を被っていることが判明した。

 3 悪意の受益者

  上記のとおり、原告と被告の間で、利息制限法による上限利率を超えた利息の約定のある金銭消費貸借契約が締結されている。利息制限法により、当該超過部分の契約は無効であるが、被告は、超過部分の利息を受領し続けてきた。債務者が利息制限法超過利息の支払いをした場合、貸金業の規制等に関する法律第43条の要件を満たさない限り、利息制限法超過部分は元本に充当され、その結果、計算上元本が完済となったとき、不当利得として返還請求が認められることは、最高裁判決によって確立されているところである。

  被告は、上記の事実を知りながら原告からの弁済を受領してきたもので、悪意の受益者としてその受けたる利益に利息を付して返還することを要する。

 4 よって、原告は、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき金140万円、民法704条により金40万円の利息、及び金140万円に対する平成19年1月31日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員の支払を求める。

証 拠 方 法

1 甲第1号証   取引履歴照会表

附 属 書 類

1 訴状副本              1通

2 甲号証写し             1通

3 資格証明書             1通

・管轄裁判所

訴えをどこの裁判所に起こせばいいのか、この裁判所の管轄の問題は非常に重要です。例えば、北海道の方が九州の裁判所にまで行かなければならないとなると、提訴も二の足を踏んでしまうことでしょう。しかし、過払い金返還の裁判は、原告(請求する人)の住所地を管轄する裁判所に提起することができます。訴訟の管轄は、原則的には、相手方である被告の住所地(普通裁判籍といいます)にありますが、過払い金返還債務は持参債務といい、義務履行地が原告の住所地になります。したがって、原告の住所地を管轄する裁判所に訴えを起こすことができます。もっとも、例えば、業者の本店所在地を管轄する裁判所が、原告の勤務先のすぐ近くにあって、そちらのほうが便利な場合は、原則どおりに業者の管轄裁判所に提訴してもかまいません。

なお、原告の住所地を管轄する裁判所に提訴した場合、契約書上の「合意管轄」を根拠として移送の申立てをしてくる業者がいます。その場合は、専門的な主張が必要になってきますので、司法書士などに相談することをお勧めします。

(記載例 移送申立てに対する反論書面)

移送申立てに対する意見書

平成  年 月 日

簡易裁判所 御中

原告  司法 士郎

意見の趣旨

本件移送申立を却下する、との決定を求める。

意見の理由

1 被告は、民事訴訟法4条1項の規定を理由として移送の申立をしている。

2 しかしながら、本件不当利得返還請求権に基づく過払い金返還の履行地は、債権者たる原告の住所地となり(民法第484条)、本件訴えは、原告の住所地を管轄する裁判所に提起することができる(民事訴訟法第5条1号)。このように、義務履行地の裁判所に土地管轄を認めたのは、財産権に関して義務の履行が伴う場合、当事者は義務履行地で履行の提供及びその受領をしなければならないので、財産権上の義務の存否の確認及び履行の請求につき義務履行地で訴えを起こすべきであるとすることは、当事者のいずれにとっても便宜であり、被告の不利益にはならないし、証拠の収集など訴訟進行の円滑にも資すると考えられるからである(注釈民事訴訟法(1)250頁、同159頁)。

3 よって、上記のとおり、御庁に本件訴訟の管轄が属するとしても、当事者の衡平を著しく害することはなく、本件移送の申立は却下されるべきである。     

 以上

・第一回口頭弁論期日

訴状を裁判所に提出すると、第一回目の期日が指定されます。通常は、裁判所書記官から電話が入るなどして期日を決めることになりますが、原告の都合を考慮してくれるのが一般的です。もっとも、裁判所によっては法廷が開かれる曜日が決まっていますから、それ以外の曜日を希望しても、期日を入れてくれません。また、土日祝日など、裁判所が休みの日には期日を入れられません。書記官が、いくつか候補日と時間を言ってくれる場合もあり、その場合は、その中から都合のよい日を選ぶことになります。期日が決まったら、裁判所に期日請書を提出します。

(書式例 期日請書)

平成**年(ハ)第12**号不当利得返還請求事件

原 告  司法 士郎

被 告  ヘコム株式会社

口頭弁論期日請書

平成  年  月  日

**簡易裁判所 御中

原 告  司法 士郎 ㊞

  頭書の事件につき、口頭弁論期日を平成 年 月 日午前****分と指定告知されましたので、同日時に出頭します。

いよいよ裁判が始まり、緊張して裁判所に行っても、業者は、最初の期日には出廷せず、答弁書を裁判所に提出して「擬制陳述」を行う場合がほとんどです。その場合でも裁判は始まり、裁判官が「訴状を陳述しますね」などと原告に聞いてきますから、起立して「陳述します」または「はい」と答えることになります。裁判官から何か難しい質問や、すぐには判断できない質問をされた場合は、あいまいな返答はせずに「追って書面で提出します。」などと答えるべきでしょう。しかし、通常は次回期日を決めるだけで終了です。

なお、中小の業者の中で2回目期日以後出廷してきて、少しでも返還額を減額させようと、遅延損害金の主張などをして、原告の計算書を争ってくる業者がいます。なお、仮に被告の遅延損害金の主張が認められても、通常は、支払が遅れた分の過払い金が減額されるだけで済みますが、請求全てが棄却されるような主張をされた場合は、司法書士などの専門家にバトンタッチすべきでしょう。

・提訴後の和解の話し合い

現在、行われている過払い金返還請求訴訟の事件は、判決に至るケースは少なく、和解で解決しているケースがほとんどのようです。これは、一部のケースを除いて、業者は判決に至れば敗訴することが分かっているからです。また、業者は判決よりも和解による解決を望んでくるのが一般的です。

訴訟を提起した後に和解をする場合は、裁判上で和解するケースと、裁判外で和解するケースがありますが、当事務所の対応としては、訴え提起後に裁判上で和解するケースのほうが多いのが現状です。

裁判上で和解するケースでは、裁判所で和解調書というものが作成されますので、当事者同士で和解書を取り交わす必要はありません。この和解調書は判決と同一の効力があり、仮に、業者が支払いをしない場合には強制執行が可能になりますが、裁判の内外を問わず、和解をしておいて業者が支払いをしないということはあまりないと思いますので、必ずしも裁判上の和解にこだわる必要はないと考えます。ただし、中小の業者の場合、裁判上の和解の方が安全と思えるケースもあります。

・和解書の作成

提訴後に業者から連絡が入り、何度か交渉を重ねた末、話がまとまり、裁判外での和解になるケースがあります(訴外和解)。その場合は、業者と和解書を取り交わすことになります。提訴後の訴外和解の場合は、和解書に過払い金の返還を受けたときには訴訟を取り下げる、という文言を入れることになります。業者の社内の稟議などに時間がかかる場合には、期日変更の申し立てを行い、期日を変更する必要があります。

(書式例 期日変更申立書)

平成**年(ハ)第12**号不当利得返還請求事件

原 告  司法 士郎

被 告  ヘコム株式会社

期日変更申立書

平成  年  月   日

○×簡易裁判所 御中

原 告 司法 士郎 ㊞

 頭書の事件につき、口頭弁論期日を平成  年 月 日午前 午後 時  

分と指定されましたが、下記理由により期日を変更されたく申し立ていたします。

 当事者間において、訴外にて和解の見込みがついたが、履行までに約1ヶ月の期間を要するため。

以上

・取下書の作成

和解した過払い金が全額振り込まれたことを確認したら、訴訟を取り下げます。取り下げるには、取下書を2通、裁判所に提出(郵送または持参)します。なお、1通は裁判所から被告である業者に送られます。

(書式例 取下書)

平成**年(ハ)第12**号不当利得返還請求事件

原 告  ヘコム株式会社

被 告  司法 士郎

取下書

平成  年  月  日

○×簡易裁判所 御中

原 告  司法 士郎

 頭書の事件につき、原告は訴えを取り下げる。

理由

原告と被告は訴外にて和解したため。

以上


過払い金返還請求起訴の記事(2):不十分な開示に対する対処法

・推定計算

業者が取引履歴を開示してこない場合は、借主自身の記憶に基づき推定計算により請求をするのが一般的です。こういう業者は、任意の和解は困難である場合が多く、任意の請求に応じない業者に対しては、裁判によって解決を図るしかありません。その場合は、訴訟においては専門的な知識による主張が必要になってきますので、この分野に精通した司法書士などの専門家に依頼することをお勧めします。

なお、裁判においては、過払い請求をする原告側に、業者に対する過払い金返還請求権が存在するという証拠を示す責任があります。これを、「立証責任」といいます。推定計算では立証したことにはなりませんので、このままでは裁判には勝てません。そこで、立証するために次のような方法が考えられます。

・文書提出命令

文書提出命令は、訴訟の中で業者が所持する取引履歴を裁判所に提出させ、これを証拠として利用するものです。この文書提出命令が出されると、業者は取引履歴を提出しなかった場合、当該文書の記載に関する相手方の主張、すなわち推定計算が真実であると推定されます。

・記憶も証拠になる。

借主の記憶が比較的明確である場合は、その記憶も証拠になる場合があります。記憶を証拠として認めてもらうためには、陳述書という書類を作成して、書証として提出する場合と、借主本人が証人となって証言するケースが考えられます。後者は、本人尋問といいます。

裁判において、本人尋問を行うには証拠申出を行います。司法書士が代理人の場合は、代理人が本人を尋問することになりますが、本人訴訟の場合は、尋問事項(質問してほしいこと)を記載した書面をあらかじめ裁判所に提出しておいて、裁判官に尋問してもらうことになります。尋問事項は、例えば、その業者からお金を借りるきっかけとなったのが、病気による入院だったとか、子供の入学に必要な費用だったなど、借入時期が特定できるような出来事を証言できるようにする必要があります。

・残高無視計算 (一定時期以前の取引履歴を廃棄したと主張する業者に対する対応) 

クレサラ業者の中には、ある一定時期以前の取引履歴のデータを消去したなどとして一切開示をしてこない業者がいます。たとえば、ある大手サラ金業者は、平成5年以前のデータをコンピュータから削除した、として、その部分の履歴を一切開示してきません。この場合、残高無視計算(「残高ゼロ計算」などともいいます)という手法がよく使われます。当該業者から開示される取引履歴は、初回の残高が、例えば「499,720円」などと、半端な金額の残高が記載されています。しかし、その残高の存在は、その業者に立証責任があるとして、残高を0円として計算するものです。このような借主の主張を認める裁判例が多数あります。

なお、このような業者でも、契約日(取引の開始時期)が特定でき、その情報を開示してくれる場合がありますので、その際は推定計算による請求も検討すべきでしょう。


過払い金返還請求起訴の記事(3):取引が分断されている場合の問題

キャッシングの取引期間中に全額返済し、再び(あるいは二度三度と)借り入れをしているケースも多いと思います。その場合、業者の中には、第一取引と第二取引は別な取引であり、別個に計算されるべきであると主張するものもいます。一般的に、第一取引と第二取引を別計算とした場合、過払い金の額は大きく変わってきます。また、第一取引の返済時期が提訴時から10年以上前である場合、第一取引の過払い金が時効により消滅し、第二取引の借金だけが残るという状態にもなりかねません。このように、取引が分断されている場合の計算方法は複雑であり、多くの裁判例を研究する必要があります。よって、取引が分断されている取引の過払い請求は、この分野に精通した司法書士等に依頼したほうが賢明でしょう。

なお、下記の控訴理由書は、大手クレジット会社を相手に当事務所で担当した過払い請求事件です。原審(簡易裁判所)敗訴、控訴審逆転勝訴(本人訴訟支援)、上告審の判決言渡し直前に相手方が取下げをして、控訴審の勝訴判決が確定した事例です。なお、本事件のとおり、最高裁判所の判例をよく理解していない簡易裁判所の裁判官もいますので、過払い請求は、判例等をよく研究している司法書士等に依頼しましょう。

(記載例 控訴理由書)

平成**年(レ)第**号 不当利得返還請求控訴事件

控訴人  ** **

被控訴人   **株式会社

控訴理由書

平成******

**地方裁判所民事*部 御中

  

控訴人  筑波 太郎

控訴人は、次のとおり控訴理由書を提出する。

第1 はじめに

1 控訴人の過払い請求について

  • 控訴人を含め、消費者金融やクレジット会社のキャッシングの借主に過払い金返還請求権が発生するのは、利息制限法第1条の解釈について、最高裁判所大法廷昭和43年11月13日判決(民集第22122526)及び最高裁判所昭和44年11月25日第三小法廷判決(民集第23112137頁)において、利息制限法の超過利息を任意に支払った債務者は、債務が存在しないことを知らずに支払った金銭を不当利得として返還請求できるという解釈を確立したことに始まる。ところが、昭和58年に、貸金業規制法第43条1項(以下「43条1項」という。)が制定され、一定の要件の基に、利息制限法超過部分の返済も有効になる例外規定が設けられた。この、43条1項の適用について、下級審の判例は必ずしも判断が統一されておらず、その中で、「腎臓を売れ!」などの強硬な取り立てで自殺者が多発するなど、商工ローン問題が社会問題になったのである。
  • その後、最高裁判所は、平成16年2月20日第二小法廷判決(民集第582380)において、43条1項の適用について厳格な解釈を採用し、次いで、平成18年1月13日判決(民集第6011)及び平成18年1月19日判決(民集第219号31頁)で、商工ローン業者に関する事件について43条1項の適用についてさらに厳格な解釈を示し、改正貸金業法へと繋がっていったのである。
  • このように、最高裁判所は、43条1項の適用がほとんど認められない厳格な解釈をとるようになり、借金で苦しんできた多くの多重債務者が、逆に過払い金に関する債権者になるなど、借金地獄から解放されたのである。しかし、控訴人の本件請求は、単に請求権の行使に止まらず、違法な金利を長年払い続けて発生した過払い金を取り戻すことにより、生活の再建を果たす意味がある。

第2 本件に関連する最高裁判所の判例

1 控訴理由を述べるに当たり、控訴人は、本件に関連する主要な最高裁判所の判例を整理する必要があると考える。すなわち、複数の取引がある過払い金の充当に関する判例として、代表的なものは以下のとおりである。

  • 最高裁判所平成15年7月18日第二小法廷判決( 民集第577895)(以下「平成15年判決」という。)

ア 貸金業者との間で複数の取引があり,そのうちの1つの取引において過払い金が発生した場合,別の併存する取引における貸付金にその過払い金を充当することができるか、という問題について、本判決は、同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につき法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務に充当され,当該他の借入金債務の利率が法所定の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができないと解するのが相当であると判示した。

イ 本判例は,基本契約のある複数の併存する商工ローン業者との取引における過払い金の充当について判断をした判例である。本判例により,一方の取引において過払い金が発生した場合,その弁済当時(過払い金発生当時)に他の取引において借入金債務があれば,一方の取引で発生した過払い金は他方の取引の借入金債務に充当されることになる。なお,上記と同様の判断は,平成15年9月11日最高裁第一小法廷( 集民第210617頁),同月16日最高裁第三小法廷(集民第210729頁)に引き継がれ,よって、これらは、最高裁判所の統一見解と言える。

(2) 最高裁判所平成19年2月13日第三小法廷判決(民集61巻1号182頁)(以下「平成19年2月判決」という。)

ア 最高裁判所は、過払金が発生した場合、過払い金の発生時に存在する別口の借入金に当然に充当されると判断した(上記平成15年判決)が、将来発生する貸付金にまで充当されるかどうかについては明確な判断をしなかった。

イ 本判決における取引の事例は、証書貸付と呼ばれる契約形態であり、一度貸付けを行うとその後は返済するのみという取引であるが、借換えや貸増しなどを繰り返すことにより、実質的に基本契約が締結されているのと同様の取引が行われる場合が多い。消費者金融業者の一部や街金融と呼ばれる業者が用いる契約形態である。

ウ 本判決は、「貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を越えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払い金が発生し(以下,この過払い金を「第1貸付け過払い金」という。),その後,同一の貸主と借主との間で,基本契約が締結されているのと同様の貸付が繰り返されており,第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか,<中略>上記特段の事情のない限り,本件第1貸付けに係る債務の各弁済金のうち過払い金となる部分は,本件第2貸付けに係る債務に充当されないというべきである。」と判示し、基本契約が存在しない場合の2個の貸付について,第1貸付過払い金は,第1貸付け完済後の第2の貸付には原則として充当されないと判断したが、「特段の事情」の存在を立証すれば、完済後の借入を含む第2の貸付に充当されるとした。

エ 上記特段の事情とは、①同一貸主・借主間で、同種の基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており、第1貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていた場合、②同一の貸主と借主の間に、第1貸付け過払い金の充当に関する特約が存在する場合、③上記アまたはイと同視し得るような事情が存在する場合である。

  • 最高裁判所平成19年6月7日第一小法廷判決(民集6141537頁)(以下「平成196月判決」という。)

ア 本判決は、「本件各基本契約に基づく債務の弁済は,各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく,本件各基本契約に基づく借入金の全体に対して行われるものと解されるのであり,充当の対象となるのはこのような全体としての借入金債務であると解することができる。そうすると,本件各基本契約は,同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。」と判示し、過払い金充当合意が基本契約の中に含まれていると判断した。

 イ 本判決は,複数の取引について同一の基本契約がある場合,そのうちの1つの取引で発生した過払い金は,その弁済当時に存在する他の借入金債務に充当される(平成15年判決)ものの,その弁済当時に他の借入金債務が存在しない場合には、その後に借入金債務が発生したとしても当然には充当されないということを確認し、上記平成19年2月判決と併せると,取引分断の場合には,基本契約の有無にかかわらず,一連充当計算できないのが原則であるということになる。

ウ しかし,本判決は,「過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意」(以下「過払い金充当合意」という。)があれば、一連充当計算できるとしており、過払い金充当合意が成立する要件としては、基本契約の内容が、①借入限度額内で金員を繰り返し借入れることができたこと、②毎月の返済金額は前月の借入金残高を基準とした一定額に定められていたこと、③利息も前月の支払い後の借入金元本残高に対する支払日までの期間で計算されていたことを挙げている。つまり、一般的な貸金業者とのリボルビング取引の形態である。

エ なお、本判決以前に取り交わされた金銭消費貸借契約において,貸金業者との間で過払金の充当を認めるような合意がなされることはあり得ないから、この過払金充当合意とは、あくまで法的な擬制ということになる。その法的な擬制を認める要件が上記①~③ということである。

オ 上記のような基本契約が締結されているということは、個々の借入れに対応して個別に返済がなされているものではなく、契約に基づく借入金債務全体に対して返済がなされているといえるから、返済金の充当の対象となるのも借入金債務全体であるとした上で、このような基本契約には過払金充当合意が含まれていると判示したのである。よって、本判決の趣旨に照らせば、基本契約が一個であれば、過払い金充当合意が認められ、一連充当計算が可能となるのである。

カ また、基本契約の中に過払い金充当合意が含まれているということは、同一の基本契約の中での取引については、その取引中に中断があったとしても過払い金充当合意が認められ、一連充当計算が可能となるということになる。

キ 本判決に関する事例は、被控訴人会社と同様、クレジット会社である○○コーポレーション株式会社とのカードキャッシュング取引による、所謂リボルビング払いに関するものであり、基本契約に基づく反復・継続的な借り入れが二つ存在した事例である。

  • 最高裁判所平成19年7月19日第一小法廷判決(民集第6152175頁)(以下「平成19年7月判決」という。)

ア 本判決も、平成192月判決を前提に、基本契約に基づかない取引について過払い金充当合意が認められたものである。

イ 本判決の事例では、基本契約を締結せずに切替え及び貸増しとして多数回の証書貸付がなされており、これを「本件各貸付けは、平成15年7月17日の貸付けを除き、従前の貸付けの切替え及び貸増しとして、長年にわたり同様の方法で反復継続して行われていたものであり、同日の貸付けも、前回の返済から期間的に接着し、前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであるというのであるから、本件各貸付けを1個の連続した貸付取引であるとした原審の認定判断は相当である。」としたうえで、「上記のように、本件各貸付けが1個の連続した貸付取引である以上、本件各貸付けに係る上告人とAとの間の金銭消費貸借契約も、本件各貸付けに基づく借入金債務について制限超過部分を元本に充当し過払金が発生した場合には、当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。」と判示した。

ウ 本判決の結論は、基本契約が締結されていない場合であっても、取引全体を判断して、実質的に一個の連続した貸付取引である場合には、その取引中に発生した過払い金は、その後に発生する新たな借入金債務に充当するという過払い金充当合意が各金銭消費貸借契約の中に含まれているというものである。ただしこの判決は、実質的に一個の連続した貸付取引であるかどうかの判断について「期間的に接着し」との判断を示し、取引中断期間は約3ヶ月の本事例について、実態としての借入れ・返済の連続性を認め、過払い金充当合意を認定している。

  • 最高裁判所平成20年1月18日第二小法廷判決(民集62巻1号28頁)(以下「平成20年判決」という)

ア 本判決は,第1取引による約定残債務が完済され、第1取引の基本契約が解約された後、第2取引を開始するために新たに基本契約が締結された事例である。第1の基本契約に基づく借入に過払い金が生じた場合、その後に締結された基本契約に基づく借入が、事実上1個の取引と評価できるときは、新たな借り入れ債務に充当するという合意が存在するとした。

イ 本判決は、「1同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが、その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り、第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されない。 2同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され、の基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが、その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され、この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合において、下記の事情を考慮して、第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができるときには、第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を第2の基本契約に基づく取引により生じた新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するものと解するのが相当である。」 と判示したものである。

ウ 本判決は、「事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる」事例として、具体的に、

  • 第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さ
  • これに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間
  • 第1の基本契約についての契約書の返還の有無
  • 借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無
  • 第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況
  • 第2の基本契約が締結されるに至る経緯、第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等

を総合考慮して判断するとし、法律的には別個である2つの取引について、事実上一個の連続した貸付取引と総合的に評価する際の判断基準となる6要素を示したものである。

第3 控訴人・被控訴人間の金銭消費貸借の契約形態と上記最高裁判例との異同

(1)控訴人・被控訴人間の本件消費貸借取引(以下「本件取引」という。)の契約内容は、借入限度額内で金員を繰り返し借入れることができ、毎月の返済金額は前月の借入金残高を基準とした一定額に定められ、利息も前月の支払い後の借入金元本残高に対する支払日までの期間で計算されるなど、所謂リボルビング契約である(乙7)。また、本件取引における基本契約は、取引当初に締結された1個であること、つまり、平成16年8月8日の再貸付けの時点では再契約をしていないこと、さらに、平成10年6月30日から上記再貸付け日までの空白期間に解約されていないことは、被控訴人において争いのない事実である(被控訴人原審準備書面(2)第1 2(2))。また、被控訴人は、本件取引に係るカードについて、失効手続きを取っていない(同書面第1 2(3))

(2)ところが、原審判決は、一連計算の可否について、「最高裁判所平成20年1月18日第二小法廷判決の判旨に照らすと」として、空白期間及び空白期間前後の取引期間の長短から、一連計算と認められないとしている。上記のとおり、平成20年判決は、第1の基本契約による取引が完済され過払い金が発生し、その後、改めて金銭消費貸借に関する基本契約が締結された事例において、第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず、二つの基本契約に基づく取引が事実上1個の連続した取引と評価することができる場合について、上記6つの具体例を示したものである。原審判決は、そのうち、空白期間等の1つの具体例を本件取引に当てはめ、一連計算が認められないと判断したものであり、最高裁判所判決の解釈を誤ったことは明らかである。よって、原審判決は、不当な判決である。

(3)上記主要な最高裁判決のうち、平成20年判決は、上述のとおり完済後、空白期間を経た後に再度基本契約を締結した事例である。平成15年判決は、完済時(過払い金発生時)に併存する別の取引が存在した事例である。平成19年2月判決及び平成19年7月判決は、基本契約がない、証書貸付による取引のケースで過払い金充当合意を認める要件を示している。よって、これらのケースは、いずれも控訴人・被控訴人間の取引の実態や契約の形態とは異なる。控訴人・被控訴人間の取引は、まさに平成19年6月判決と全く同様のクレジット会社とのリボルビング契約によるキャッシング取引であり、基本契約が当初の1個のみの事例であるのであるから、原審においては、平成19年6月判決の判旨に照らし、本件取引において過払い金充当合意が認められるか否かを判断すべきであった。

(4)よって、原審においては、控訴人が主張・立証した事実について審理が尽くされていないから、本件控訴を提起するものである。

以上


過払い金返還請求起訴の記事(4):過払い金に関する相談事例

・破産の場合でも過払い請求ができるか

Q 

多額の借金を抱えて破産の申立てを考えています。その中で、1社だけサラ金と長期の取引があり、過払い金が生じているようです。この過払い金を取り戻すことはできますか。

A 

一部のサラ金とは長期の取引があり、過払い金の返還請求権があるのに、それ以外の借金の額が膨大で、過払い金を他の借金の返済に充てたとしても、破産は避けられないような場合があります。例えば、現在、失業中のAさんが、銀行や公的な金融機関から、教育ローンやカードローンの借金が合計700万円程度あり、一方、サラ金から120万円の過払い返還請求権があるとします。Aさんには他にめぼしい資産もなく、過払い金を取り戻して返済に充てたとしても、現在残った借金を返していけそうもない場合、破産もやむを得ないということになります。

  

この場合は、Aさんは、破産の申し立てをする前に、過払い金の回収を行うべきと考えます。回収した過払い金は、破産申立の際の司法書士費用などに充てることができますから、Aさんとしては大いに助かることになるでしょう。また、破産では免責されない税金や年金保険料の支払い、また、滞納している家賃や公共料金の支払いに充てたり、当面の生活費に充てたりするなど、生活の再建に役立てることは問題ないものと考えます。しかし、回収したお金で友人や親類など一部の債権者に対して優先的に返済することや、レジャーや高額商品の購入などに消費することは許されませんし、破産の手続きに悪影響を及ぼす場合もありますので注意が必要です。

一方、例えば、過払い金をそのままにして破産の申立てをすると、その過払い金が財産となり、破産手続きに破産管財人が選任されて、破産手続きの中で過払い金を回収し、他の借金の返済に充てる「配当」という手続きが行われることになります。過払い金を生活再建のために有効に利用できなくなるばかりか、選任された破産管財人の費用(最低20万円程度)まで負担しなければならないこともありますので注意が必要です。

また、債権者が取引履歴を開示しないことによって、過払い金額が確定できないためにそのままにして、他の借金について破産手続きを行い、借金の免除(免責)を受けた場合、一部の借金の免除を受けておきながら、破産手続き終了後に、過払い金の返還請求ができるか、という問題があります。裁判所の判例では、このような場合に過払い金の返還請求をすることは、権利の乱用にはあたらず認められるとするものがあります。過払い金があるのにそれを放置されて破産の手続きをされてしまった場合、あなたに「過払金及びその詳細について認識した上で,これを隠匿して免責を得た」といった事実がなければ、過払い金の返還を受けられる可能性があります。

・個人再生の場合でも過払い請求ができるか

Q  

個人再生という手続きがあると聞きました。個人再生の申立てをしても、過払い金の取り戻しはできるのでしょうか。

A  

個人再生手続きは、民事再生法という法律に基づき、給与所得者や自営業者などの個人が行う債務整理の手続きです。個人再生の場合は、過払い金の返還に関しては、破産の場合と多少異なります。例えば、上記の事例で、Aさんは住宅ローン支払い中の自宅不動産を所有していたとします。この場合、Aさんが破産をすると、それによって自宅を失うことになってしまいます。そこで、Aさんが何とか再就職をして、安定した収入を得られるようになった場合には、個人再生により自宅を持ち続けられるよう検討しなければなりません。

この場合、Aさんは個人再生の認可が得られると、住宅ローン以外に、①借金の金額の5分の1、②100万円(法定の最低弁済額)、③財産の額、のいずれか一番高い額を原則として3年間で返済し、残りの借金の免除を受けます(小規模個人再生の場合)。Aさんの住宅ローン以外の借金の額は700万円ですから、その5分の1は140万円、財産については、住宅はその評価額からローンの残金分は控除されますから、通常、財産的価値はありません。また、Aさんには他にめぼしい資産がありませんので、過払い金の120万円だけが財産ということになります。したがって、最低弁済額の100万円と比較しても、借金の5分の1が一番高額となり、Aさんは再生計画案が認可されると、住宅ローン以外に140円を3年間で返済、つまり、月3万9千円程度の支払いをすれば、残りの借金は免除されます。

もっとも、個人再生の申立てをする場合でも、事前に過払い金を回収して、破産の場合と同様に手続きの費用に充てたり、滞納している税金等に充てたりすべきだと考えますが、早急に個人再生手続きの申立てをする必要がある場合もあります。例えば、一定期間住宅ローンを滞納したために、住宅ローンの保証機関が債務者に代わって返済を行い(代位弁済)、保証会社から住宅ローンの支払い請求を受けている場合、保証機関が住宅ローンの債権者に代位弁済してから6ヶ月以内に個人再生手続きの申立てをしないと、以後、一切申立てができません。すでに代位弁済がなされていて、申立てを急がないといけない場合は、過払い金の回収は後回しということになるでしょう。

・サラ金と取引のある方全てが、過払い請求ができるわけではない

Q 

私は、2、3年前にサラ金に手を出し、現在3社から200万円程度の借金を抱えています。これまで、過払い金を取り戻すことはできますか?

A 

最近の借入れですと、利息制限法の利率の範囲内の貸付け(1520%)と思われますので、過払い請求をすることはできません。ただし、以前にも同じ業者から借入れがある場合、その最終取引日が10年以内であれば、その過払い金(及び過払い利息)を現在の債務から控除(差し引く)ことができる可能性があります。

 

・ブラックの問題

Q 

過払い金の返還請求をすると、ブラックリストに載ってしまうと聞いたのですが。

A 

過払い請求をしても、ブラックリストに載ることはありません。貸金業者が加盟する信用情報機関に事故情報として登録されることを一般に「ブラック」といいます。「破産すると、ブラックリストに載るよ」などと言われているのは、この信用情報機関に事故情報が載ることを言います。なお、そのリストが公表されているものではありませんので、自分がブラックであることが他人に知れるものではありません。

ブラックになると、一定期間(最長で10年と言われています)、金融機関等からの借り入れができなかったり、クレジットカードが作れなかったりします。これまで、長年借金で苦しんできた方は「一生借金はしない」との決意で、人生の再スタートをきってもらいたいものです。したがって、一定期間ブラックになることは、借金をしない生活習慣を付ける意味で、むしろ歓迎すべきことではないかと考えます。

しかし、例えば事業者で、銀行から融資が受けられなくなると事業が続けられなくなるとか、近い将来、住宅ローンを利用してマイホームを計画している方などは、ブラックになることによって、それらの融資が受けられない事態が生じます。破産した場合などは、ブラックになることも諦めがつくでしょうが、本来、正当な権利の行使であるはずの過払い請求によって、事業の継続やマイホームをあきらめるのは納得のいかないものだと思います。

したがつて、過払い返還請求は、法的に正当な権利行使ですので、それによって信用が低下するのは不当なことであり、信用情報にはブラック等、何らの情報も記載されないことになっています。