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2018年09月14日

妻(配偶者)が認知症の場合に相続で注意すべきこと

配偶者(ここでは妻(Bさん)とします。)が認知症の場合、何も対策をしないでご主人(Aさん)が亡くなると、相続人間で遺産分割協議ができず、ご主人の財産が凍結され、預金の払い出しすらできない状態になってしまいます。


(成年)後見人を選任すると… 

認知症のBさんに後見人を選任した場合、後見人は、被後見人であるBさんにとって不利な遺産分割協議はできませんので、必ずしもご家族の願いに叶う、柔軟な遺産の管理や処分等ができるとは限らなくなります。

えば、AさんBさん間に子供がいる場合、Bさんは、亡くなったAさん名義の財産のうち2分の1を相続することになります。しかし、Bさんが相続した現金、預金については後見人によって管理され、事実上凍結状態となります。また、一部Bさん名義になった共有不動産を処分するには、必ず後見人の関与が必要となり、通常(後見人に重大な問題等なければ)、その意思に背くことはできません(居住用不動産の場合は裁判所の許可が必要)。

また、親族を後見人候補者として申立てをしても必ず認められるものではなく、司法書士や弁護士等の専門職が後見人(または後見監督人)に選任されると、それに対する費用の支払いがBさんの生涯続くことになり、年間数十万円の費用が、凍結された預金から充当されることになります。なお、一度選任された後見人は、極めて重大な事実(横領等)がなければ解任することはできません(民法第846条)。

後見制度によって恩恵を受けている方々が多数存在することも事実ですが、財産の所有者に意思能力がある場合は、相続の手続きに関する選択肢が広がりますので、様々な視点から検討されることをお勧めします。

 
遺言の場合…

遺言は、相続において極めて重要な役割を担うケースが多く、また、必ず遺言を遺しておくべきケースもあります。遺言についてはこちらをご覧ください。

しかし、遺言は全てにおいて万能ではありません。例えば、上記のケースでいえば、Aさんが遺言でご長男に財産を相続させるとしていても、Bさんの後見人は必ず「遺留分減殺請求」をしてきますので、一定割合をBさんが相続することになり、Bさん分の預金及び共有不動産が後見人の管理下に置かれ、基本的に凍結状態になることに変わりはありません。

 

また、Bさんに後見人を選任せず、Aさんが遺言によりご長男に全ての財産を相続させるとした場合、万が一ご長男がBさんより先に亡くなると、結果的にAさんの財産の全てがご長男の配偶者とその子供に相続され、Bさんには一切遺産がいかないことになります。そのため、Bさんは一文無しになるばかりか、法的に自宅に住む権利すら失うなど、Bさんが極めて不利な立場に立たされ、不利益を受ける恐れがあります。

 

このような不幸な出来事はあまり想像したくありませんが、司法書士の仕事をしていると意外によく遭遇する案件であり、上記例でいいますと、通常、長男のお嫁さんは、亡くなったご主人のお母さんの介護を嫌い、子供を連れて家を出ていってしまいます。

 

冷たい言い方かもしれませんが、これが世の中の現実なのかもしれません。(しかし、以前に、亡夫の老親の世話を献身的にされているお嫁さんの姿に、頭が下がる思いがしたことがあります。法的、財産的に何のメリットもないのにもかかわらず…)

・家族信託にすると…

そこで、Aさんがお元気なうちにご長男との間で家族信託を組み、委託者兼当初受益者をAさん、受託者をご長男(予備的受託者を長男の配偶者)、2次受益者を妻Bさん、3次受益者(または残余財産帰属者を長男等)としておけば、妻Bさんが上記のような不利な扱いを受けることはなくなります。
(この場合、遺留分について当事者の方によく理解していただくことになります。)。

Aさんの遺した遺産により、Bさんは受託者であるご長男の責任において適切な福祉、医療を受けることができるようになります。

 

委託者(ご主人) ⇒ 受託者(長男)

    ↕↕       

当初受益者(ご主人)  2次受益者() 
                                           
                                           ↓
 
     3次受益者(または残余財産帰属者)=長男等