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家族信託・民事信託

家族信託・民事信託に関する目次




  •  家族信託、民事信託をご検討いただきたいケース
  1. 妻が認知症である
  2. 高齢者同士の再婚を考えているが、子供たちが反対している
  3. 一人暮らしの母親の振り込め詐欺被害が心配
  4. ギャンブル好き(浪費癖)のある親族がいる

  • 家族信託、民事信託に関するQ&A
  1. 家族信託、民事信託の対象となる財産は何ですか?
  2. 現金、預金はどのように管理しますか?(「信託口口座」について)
  3. 信託成立後、追加で財産を信託することはできますか?(追加信託について)
  4. 信託の計算書」について教えてください
  5. 家族信託における予備的(後任)受託者について
  6. 家族信託によりアパートを信託財産として受託者である息子に管理させています。毎月の賃料は「信託口口座」に入金されています。この賃料も信託財産となるのでしょうか。
  7. 父親か権利をもつ墓地がありますが、これも信託財産に入れたほうがいいですか?
     
 

 


家族(民事)信託とは何か

主な登場人物は①委託者②受託者③受益者です

委託者の財産を受託者に託し(受託者名義にし)、受託者が信託契約(委託者と受託者で締結します)に基づき、受託者において管理や処分を行うものです。一例として、高齢の父親を委託者、長男が受託者、受益者が父親とイメージしてください。

                         
    委託者(高齢の父)  ⇒   
受託者(長男)

            ↕↕

    受益者(高齢の父) 

例えば、収益不動産等の財産を持っている父親が、今までは父親自身により財産の管理等を行ってきましたが、高齢のため最近では管理が難しくなってきており、また、認知症等の判断能力を喪失した場合のことも心配になってきました。

旧民法の時代であれば「隠居」が認められており、生前に財産を子に移すなどしていましたが、今はうかつに不動産の名義を子に変えてしまうと、高額の贈与税が課税される恐れがあります。

そこで、高齢化社会を背景に、信託(家族信託)がクローズアップされているのです。

例えば、判断能力が衰えかけてきた高齢者の不動産の管理・処分を、家族信託のスキームを組むことによって(親と子の契約により)、親の判断能力喪失後も、子が受託者として受益者たる親のために財産の管理・処分を行うことができます(認知症対策)。

また、一人暮らしの高齢者について、自宅を処分してその金銭で介護費用に充てたり、施設に入所してもらう計画を立てても、自宅売出中に親が認知症を発症してしまうと、計画が頓挫してしまいます。「家族信託」で、子を受託者として親の財産を処分し、現金化された信託財産は、受益者たる親のために、受託者(子)が管理することが可能であり、介護や施設に支払うお金や、親のために子の自宅を改装する場合の資金等に充てることができます。

信託によって生じた利益は、受益者のためのものです。家族信託では、委託者=受益者という契約にするのが一般的です。これを「自益信託」といいます。自益信託では、財産が自分から自分に贈与されたものとみなされ、したがって、贈与税が課税されることはありません。

また、信託される主な財産は、①不動産 ②現金・預金 ③株式(自社株)が一般的ですが、例えば犬や猫なども信託の対象となり得ます(「ペット信託」法律的には動産の信託となります)。

重要な事は、家族信託は、決して受託者の利益のために設定するのではなく、あくまでも受益者(通常は=委託者、上記の例でいえば父親)のためのものです。

例えば、委託者Aさんが高齢のため、最近は賃貸アパートの管理が大変になってきたというケースで、万が一、認知症や体の自由が利かなくなった時のことも考えて、息子のBさんを受託者にして信託を設定します。その場合、受益者は父親のAさんにするのが一般的です(自益信託)。


    委託者(父Aさん) ⇒   受託者(息子Bさん)

           ↕↕

    受益者(父Aさん) 



アパートから生じた賃貸収入は、Aさんのものです。万が一、Aさんが認知症になるなど判断能力が衰えても、AさんとBさんとの信託契約に基づき、Bさんによって契約の更新や修繕、売却などの行為も問題なく行うことが可能になります。賃料収入や売却により得た代金は、現預金たる信託財産として引き続きBさんによってAさんのために管理されます。

ちなみに、Bさんは、毎月一定割合の「受託者報酬」としてアパートの収益の中から報酬を得ることもできます。

新信託法の2つの目玉(遺言代用信託と受益者連続型信託)

信託法は、大規模な改正が行われ、2007年に施行されました。改正前は、信託会社による商事信託のための法律という印象でしたが、改正後は、受託者が一般人である民事信託としての「家族信託」のスキームが可能となり、現在、高齢化を背景に社会から大きな関心が集まっています。改正後の信託法を「新しい信託法」とか「新信託法」などと称されることがあります(法律の正式名称は「信託法」です)。

受益者連続型信託(91条)では、例えば、子供のいない夫婦において、夫の死後、妻の生活(自宅に居住する権利等)を生涯保障してあげられ、妻の死後は、妻の親族への財産散逸を防ぎ、自身(夫)の親族に財産を戻すスキームが可能となります。

      委託者(本人) ⇒  受託者(X)

         ↕↕       

      受益者(本人) → 2次受益者(妻)  妻の親族(兄弟等)
       
   3次受益者(夫の親族、甥姪等) 



これは、下記のような高齢者の再婚のケースにおいても応用できるケースがあります。

 
      委託者(本人) ⇒  受託者(X)

         ↕↕       

      受益者(本人) → 2次受益者(妻)  妻の兄弟
       
      3次受益者(夫の子) 



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家族信託(民事信託)の有効活用事例1:1人暮らしの老親の不動産売却

質問

私の母は一人暮らしをしており、最近、物忘れがひどく、火災や事故などの心配をしています。母名義の自宅を売却して、そのお金で施設に入所してもらおうと思っており、母も賛成してくれています。何かいい方法はありますか。また、母が認知症になった場合、長男の私が母名義の不動産の処分をすることは可能ですか。

回答

ご質問の事例ですと、「家族信託(民事信託)」のご検討を強くお勧めします。お母様が委託者兼受益者、ご長男が受託者として、お母様とご長男で信託契約を結んでいただきます。

    委託者(母)  ⇒    受託者(長男)
       ↕↕       (財産の管理、処分)

      受益者(母) 





不動産の処分にはある程度の時間がかかるものです。不動産業者に依頼して買主さんが見つかるまでに、お母様が認知症等により判断能力が衰えてしまうと、原則として不動産を売ることができなくなります。

仮に、お母様の意思により不動産が売却できたとしても、その後に認知症を発症してしまうと、不動産の売却代金を勝手に消費することはできません。これは、お母様のためであったとしても同じです。横領等の指摘を受けたり、他の相続人との間で無用なトラブルを起こす原因にもなりかねません。

しかし、家族信託をすることによって、お母様が認知症等になってしまっても、受託者であるご長男が、不動産の「売主」として売却手続きを進めることができます。また、不動産の売却代金は、その後「信託財産」としてご長男が管理していくことになります。その中から施設の入所費用や毎月お母様にかかる費用を捻出していきます。

将来的にお母様が亡くなられた場合、残余財産(余った預貯金)は、当初の信託契約に基づき、ご長男や他の相続人等が相続することになります(遺言代用信託)。

なお、家族信託をしていない場合、お母様が認知症になってしまうと、自宅の不動産の処分をご長男がすることはできません。その場合、後見人を選任して、裁判所の許可を得てお母様の自宅不動産の売却をすることになります。後見人の選任手続きに数か月の時間がかかりますので、買い手がついてもすぐに処分できないことになります。また、その後のお母様の財産の管理は、後見人がすることになり、事実上、財産が凍結されることになるほか、後見人(または後見監督人)に対する毎月の報酬を、お母様が亡くなるまで支払うことになります。

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家族信託(民事信託)の有効活用事例2:地主である父親の相続対策としての不動産処分

質問

父は、先代から相続した土地を多数所有していますが、そのうちの数十筆の土地が開発地域にかかり、固定資産税の評価額が高くなりました。最近、税務相談を受けたところ、父が亡くなるとかなりの額の相続税が課税されることがわかりました。しかし、父には預貯金等の金融資産はほとんどないらしく、父の万が一の時に備えて、一部の不動産を売却することにしました。

父は今は元気ですが、高齢であり、土地の売却が終わるまで元気でいてくれる保証はありません。長男の私に名義を移すことも考えましたが、莫大な贈与税がかかることがわかりました。なにかいい方法はありませんでしょうか。

回答

ご質問の事例では、「家族信託(民事信託)」のご検討をお勧めします。お父様が委託者兼受益者、ご長男が受託者として、売却を検討している不動産等を対象に信託契約を、お父様とご長男で結んでいただきます。

 
   
委託者(父)
  ⇒   
受託者(長男)

            ↕↕

    受益者(父) 

信託契約後は、ご長男が「売主」として不動産を売却していきますが、売却代金は「受益者」であるお父様のものです(お父様のために活用されます)。したがって、お父様がお元気なうちは、売却代金の活用方法について当然にお父様のご意思を反映させることができます。

また、お父様が認知症等により判断能力が低下した場合は、受託者であるご長男の判断で、不動産の売却や売却代金の管理・運用等を信託契約に基づいて行っていただくことになります。 

なお、ご長男は、信託契約で定めることにより、受託者として一定金額の報酬を受領することもできます。

お父様が、「長男が私の財産管理をすることに多少心配がある」などと考える場合は、受託者であるご長男に、信託契約で定めることにより、信託監督人を選任することも可能です。本事例で信託監督人は、受託者(長男)が、受益者(お父様)のために適切に信託事務を遂行しているか監督することになります。信託監督人としては、例えば、次男の方など受託者の親族や、司法書士等が就任することも可能です(親族を信託監督人とした場合は、後日、信託監督人と受託者との間で紛争が起きやすいという意見があります)。


    委託者(父)  ⇒    受託者(長男)

            ↕↕         ☝

    受益者(父)  ➡  信託監督人(司法書士等) 

 

将来的に、お父様の相続が開始した場合(お亡くなりになられた場合)は、信託契約に基づいて、残余財産を相続人に帰属させることになるか、受益者を指定することになりますので、生前のお父様のご意思を相続後に反映させることができます(遺言機能、ただし、遺留分権利者の遺留分を侵害しない内容になります。)。

また、必要に応じて、信託契約の対象外とした財産について、信託契約と同時に遺言書の作成をしておくこともご検討いただきます。

なお、信託契約は、財産の所有者(委託者となる方)が、認知症等判断能力を喪失してしまうと締結できませんので、早めの対応をお勧めします。。

みらいリーガルオフィスは、茨城県内の大手不動産業者様とお取引があり、顧問税理士がおりますので、上記のような事例も安心してご相談いただけます。

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家族信託(民事信託)の有効活用事例3:子供のいない夫婦の財産散逸防止(妻の親族へ財産が移ることの防止)信託

質問

私たち夫婦には、子供がおりません。私には重い持病があり、いつ逝っても妻が困らないように、自宅と収益アパート、多少の預金を遺してあります。しかし、妻が亡くなった後、妻の兄弟に私の遺産が行ってしまうことに強い抵抗があります。

妻が、生涯の幕を閉じた後は、私の甥に上記財産を渡したいのですが、何かいい方法はありますか?

回答

ご質問の事例では、「家族信託(民事信託)」のご検討をお勧めします。ご主人様が委託者兼「当初受益者」、奥様を「二次受益者」、甥の方(成人である必要があります)を受託者として、上記不動産を対象に信託契約を、ご主人様と甥の方で結んでいただきます。

将来、受託者(上記ケースでは甥)が、きちんと受益者の利益になる信託事務を遂行するか心配な場合は、信託監督人の選任をご検討いただくことになります。信託監督人は、司法書士も就任できます(有償)。


      委託者(本人) ⇒  受託者(甥)

         ↕↕       
       受益者(本人) → 2次受益者(妻)  妻の兄弟
    
          3次受益者(甥)
 


なお、このケースでは、甥が未成年の場合、信頼のできる親族の方がおられれば、その方を受託者とすることも考えられます(未成年者は受託者にはなれません)。

この信託により、ご主人様が亡くなった後も奥様が自宅不動産に居住し続けられることができ、生活費は、アパートの収益金を充てることができます。

なお、現預金については、当初は、信託財産とはせず、奥様が認知症等、管理能力の低下がみられた場合は、追加で信託財産として加え、受託者によって、(受益者である)奥様のために管理していくように変更することも可能です。

奥様が亡くなられた後は、信託契約に基づき、受益権(自宅と収益アパートの権利⦅または不動産処分後の現金⦆)を甥の方が取得することになり、奥様の兄弟等に財産が渡ることを防ぐことができます。

なお、家族信託以外の方法としては、ご主人様が奥様に相続させるという内容の遺言を書き、同時に奥様が甥の方に対して相続させるという内容の遺言を書く、という方法が考えられます。しかし、遺言はいつでも書き換えることができますので、ご主人様が亡くなった後に遺言を撤回される恐れがあるなど不安定ですし、奥様の判断能力が低下した場合の財産管理の方法などは解決されない、という問題点があります。

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司法書士が家族信託(民事信託)を業務として行い得る法的根拠

司法書士が、家族信託(民事信託)を業として行うことができるのは、司法書士法第29条を受けた司法書士法施行規則第31条に基づくものです。子の規定は、元々司法書士が行っていた財産管理業務について、司法書士法人も当然に行うことができる旨を規定したものであり、財産管理業務ついて司法書士の業務範囲であることが明文化されたものです。

司法書士法

(業務の範囲)

第二十九条  司法書士法人は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うほか、定款で定めるところにより、次に掲げる業務を行うことができる。

 法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部又は一部

(以下略)

司法書士法施行規則

(司法書士法人の業務の範囲)

第三十一条  法第二十九条第一項第一号 の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。

 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務

 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務

 司法書士又は司法書士法人の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の業務

(以下略)

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家族信託(民事信託)の費用

 財産の価格(評価額)報酬(税別)
「家族信託」設計コンサルタント
1,000万円未満
1,000万円以上
20万円
1,000万円ごとに3万円を加算
所有権移転及び信託の登記 1,000万円未満
1,000万円以上
10万円
 5,000万円ごとに1万円を加算
筆数加算 不動産1個につき 1000円を加算
  • 相談料は無料です
  • 不動産登記には、報酬の他、登録免許税が必要になります。無料見積りいたします。
  • 公証人の手数料が別途必要になります。 公証人の費用はこちらをご覧ください。

家族信託、民事信託の対象となる財産は何ですか?

家族信託には、例えば、親の所有する財産について高齢等を理由に管理が難しくなり、子が親のために管理をしていくケースがあります。このようなケースでは、一般的に親が委託者兼受益者、子が受託者となります。

 

信託の対象となる財産(信託財産)は、プラスの財産であれば財産の種類に制限はありませんが、不動産と現預金を対象とするケースが多いです。

 

不動産は、上記のケースでは受託者である子に名義を移し、親は、その不動産について受益者である旨の登記がなされます。

 

現金や預金については、信託口の管理口座を作り、受託者(子)が自らの財産とは分別して管理していくことになります。例えば、収益不動産の毎月の家賃収入を信託口口座を利用して子が親のために管理します。


現金、預金はどのように管理しますか?「信託口口座」について

家族信託を始めると、信託財産用の専用口座として金融機関において預金口座(信託口口座)を開設することになります。これは、受託者が、委託者から託された財産を受託者自身の財産と区別して管理等するための重要な作業となります(分別管理義務 信託法第34条)。

まだまだ、信託口口座を開設してくれる金融機関は少なく、限られています(茨城県内に本店を持つ地方銀行等の金融機関は今のところ全く対応していません⦅本文執筆時⦆。)。

例えば、屋号のように「委託者…信託口…」などと通帳に記載したところで、法的には信託財産とはみなされず、受託者固有の財産として扱われてしまう場合があります。その結果、受託者が死亡した場合に口座が凍結されたり、受託者の債権者から差押えを受けたり、万が一受託者が破産した場合は、受託者の預金として処理されるなどの不利益を受ける恐れがあります。

これでは、手間暇かけて家族信託を行った意味がなくなってしまいます。 安心して家族信託をするためには、然るべき金融機関で正規の「信託口口座」を開設することが重要です。

「信託の計算書」について教えてください

信託の受託者は、信託財産における年間の収益が3万円(信託期間が1年未満の場合は15,000円)を超える場合には、信託の計算書を税務署に提出する必要があります(所得税法227条)。信託の計算書は、毎年1月31日までに、「信託の計算書合計表」と共に税務署に提出しなければなりません。書式は、国税庁のホームページにあり、さほど難しいものではないと思います。

 

したがって、賃料収入のある不動産を信託財産とした場合や、信託成立後に賃貸するなどして上記を超える収益を生じた場合は、信託計算書を税務署に提出するようにしましょう。


家族信託における予備的(後任)受託者について

当事務所で家族信託をされる方は、親が委託者(兼受益者)、子が受託者というケースが多く、つまり、子が親の財産を管理することになります。しかし、このようなケースで、万が一、子が先に亡くなってしまったり、事故や病気で受託者としての任務が遂行できなくなってしまった場合に備えて、予備的に後任の受託者を信託契約の中に設けていただくことをお勧めしています。

 

後任の受託者の規定を設けていない場合、委託者兼受益者(上記の例では親)により、新受託者を選任できるとしています(信託法第62条1項)。しかし、親が認知症を発症するなど判断能力が低下していた場合は、利害関係人の申立てにより裁判所が関与して後任の受託者を選任しなければなりません(同条4項)。したがって、そのような事態が生じないように、予め後任の受託者を信託契約書で決めておいた方がよいのです。

 

しかし、受託者は、委託者の財産を管理する方ですので誰でもいいという訳にはいきません。受託者は、子が多いことは上述のとおりですが、後任受託者の選定で揉めるケースがあります。例えば、目ぼしい後任受託者が受託者の妻しか見当たらない場合、その提案をすると、委託者(親)の方の中には、①「嫁にワシの財産管理などさせられない!」②「相続人でない人間に財産はやれん!」と強い抵抗を示される場合があります。 しかし、②は、「受託者」と「受益者」の区別がついていませんので、その違いを丁寧に説明します(無報酬の受託者は、義務だけ生じるものであり、財産を受けられるものではないことなど)。

①は、例えば、万が一、受託者である子が事故などで働けなくなり、医療費やリハビリ、又は住宅の改修などで多額の費用が必要となる場合、後任受託者であるお嫁さんによって2次受益者である息子さん(最初の受託者)のために、信託財産を有効に活用・管理することができることなどを説明します。

 

なお、上記の事例は、信託契約書に特別の規定を設けることにより成立しますので、「家族信託専門士」など、専門的に信託を研究している専門家に依頼することをお勧めします(最近、ネットのひな形等を丸写ししただけのような信託契約書が見受けられ、極めて問題だと考えております。)。信託契約書の不備や問題点は、数年後あるいは10年、20年後に、致命的に発覚することになります。公正証書にしたからといって、安心できるものではありません。


家族信託によりアパートを信託財産として受託者である息子に管理させています。毎月の賃料は「信託口口座」に入金されています。この賃料も信託財産となるのでしょうか。

少し専門的で分かりにくい回答になります。

信託財産の範囲については、信託法に次の規定があります。

 

信託法(抜粋)

(信託財産の範囲)

第十六条  信託行為において信託財産に属すべきものと定められた財産のほか、次に掲げる財産は、信託財産に属する。

 信託財産に属する財産の管理、処分、滅失、損傷その他の事由により受託者が得た財産

 

上記のとおり、信託財産の範囲が「信託財産に属する財産の管理…その他の事由により受託者が得た財産」であるから、この規定により賃料(法律用語は「(法定)果実」といいます。)は信託財産に含まれる、と考える専門家もいるようです。しかし、上記規定の趣旨は、例えば、信託財産である不動産を①受託者が処分して現金化された場合の現金、②火災により焼失した場合の保険金、③第三者の加害行為により損害を受けた場合の賠償金など、信託財産の性質が変わった場合の変更後の財産に対する「物上代位」を定めたものであり、法定果実に関する規定ではありません。

 

したがいまして、賃料や預金の利息など法定果実は当然に信託財産となるものではなく、これを信託財産とする場合は、上記16条柱書の「信託行為において信託財産に属すべきものと定められた財産」とする必要があり、必ず、信託行為(信託契約)に同条項を設ける必要があると考えます。

信託契約書の例として

(信託財産)

第○条 本件信託財産は、次のとおりとする。

  1. 不動産 (別紙「信託財産目録」記載の土地・建物)
  2. 現金  円(委託者○○に関するもの)
  3. 信託財産から生じる利息その他の果実

なお、単に信託口口座に(賃料が)入金された事実だけでは、その金額を信託財産とする根拠にはなりません。信託口口座に入金されたから信託財産になるのではなく、信託財産であるから分別管理義務の履行として信託口口座に入金する必要があるのです。

 

 


父親か権利をもつ墓地がありますが、これも信託財産に入れたほうがいいですか?

家族信託、民事信託におけるお墓の権利の承継

 

ご質問の墓地の権利についてですが、結論から言いますと、信託契約に入れる必要はありません(入れる性質のものではないとも言えます。)。

 

墓地の権利等、祭祀の承継については、民法897条に規定があります。

 

(祭祀に関する権利の承継)

第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

 

このように、お墓等祭祀の相続については一般の相続財産とは区別され、誰が承継するかは、

① 被相続人(亡くなられた方)が指定した、祭祀を主宰すべき方

  ↓

② 慣習に従う

  ↓

③ 家庭裁判所が定める

の順序によります。

 ①は、必ずしも遺言等書面による必要はなく、口頭による意思表示でよいと考えられています。ちなみに、遺骨もこの規定に含まれます(判例)。ただし、誰が承継するか相続人間で揉める可能性がある場合は、公正証書等の書面で承継者を指定しておくべきでしょう。

なお、お墓については念のため、管理するお寺等にご確認いただければと思いますが、届出や手続等をすることにより永代使用権等の権利は次世代の主宰者に承継されるのではないかと考えます(お墓の土地を所有権でお持ちの場合は登記をすることになります)。

上記のとおり、墓地等の承継者は、被相続人が指定した方がいなければ慣習に従うことになります(慣習もなければ裁判所の調停等による)。  


妻が認知症である

配偶者(ここでは妻(Bさん)とします。)が認知症の場合、何も対策をしないでご主人(Aさん)が亡くなると、相続人間で遺産分割協議ができず、ご主人の財産が凍結され、預金の払い出しすらできない状態になってしまいます。


後見人を選任すると… 

認知症のBさんに後見人を選任した場合、後見人は、被後見人であるBさんにとって不利な遺産分割協議はできませんので、必ずしもご家族の願いに叶う、柔軟な遺産の管理や処分等ができるとは限らなくなります。

えば、AさんBさん間に子供がいる場合、Bさんは、亡くなったAさん名義の財産のうち2分の1を相続することになります。しかし、Bさんが相続した現金、預金については後見人によって管理され、事実上凍結状態となります。また、一部Bさん名義になった共有不動産を処分するには、必ず後見人の関与が必要となり、通常(後見人に重大な問題等なければ)、その意思に背くことはできません(居住用不動産の場合は裁判所の許可が必要)。

また、親族を後見人候補者として申立てをしても必ず認められるものではなく、司法書士や弁護士等の専門職が後見人(または後見監督人)に選任されると、それに対する費用の支払いがBさんの生涯続くことになり、年間数十万円の費用が、凍結された預金から充当されることになります。なお、一度選任された後見人は、極めて重大な事実(横領等)がなければ解任することはできません(民法第846条)。

 
遺言の場合…

遺言は、相続において極めて重要な役割を担うケースが多く、また、必ず遺言を遺しておくべきケースもあります。遺言についてはこちらをご覧ください。

しかし、遺言は全てにおいて万能ではありません。例えば、上記のケースでいえば、Aさんが遺言でご長男に財産を相続させるとしていても、Bさんの後見人は必ず「遺留分減殺請求」をしてきますので、一定割合をBさんが相続することになり、Bさん分の預金及び共有不動産が後見人の管理下に置かれ、基本的に凍結状態になることに変わりはありません。

 

また、Bさんに後見人を選任せず、Aさんが遺言によりご長男に全ての財産を相続させるとした場合、万が一ご長男がBさんより先に亡くなると、結果的にAさんの財産の全てがご長男の配偶者とその子供に相続され、Bさんには一切遺産がいかないことになります。そのため、Bさんは一文無しになるばかりか、法的に自宅に住む権利すら失うなど、Bさんが極めて不利な立場に立たされ、不利益を受ける恐れがあります。

 

このような不幸な出来事はあまり想像したくありませんが、司法書士の仕事をしていると意外によく遭遇する案件であり、上記例でいいますと、通常、長男のお嫁さんは、亡くなったご主人のお母さんの介護を嫌い、子供を連れて家を出ていってしまうケースが一般的と思われます。

 

冷たい言い方かもしれませんが、これが世の中の現実なのかもしれません。(しかし、以前に、亡夫の老親の世話を献身的にされているお嫁さんの姿に、頭が下がる思いがしたことがあります。法的、財産的に何のメリットもないのにもかかわらず…)

・家族信託にすると…

そこで、Aさんがお元気なうちにご長男との間で家族信託を組み、委託者兼当初受益者をAさん、受託者をご長男(予備的受託者を長男の配偶者)、2次受益者を妻Bさん、3次受益者(または残余財産帰属者をご長男)としておけば、妻Bさんが上記のような不利な扱いを受けることはなくなります(この場合、遺留分について当事者の方によく理解していただくことになります。)。

Aさんの遺した遺産により、Bさんは受託者であるご長男の責任において適切な福祉、医療を受けることができるようになります。

 

委託者(ご主人) ⇒ 受託者(長男)

    ↕↕       

当初受益者(ご主人)  2次受益者() 
                                           
                                           ↓
 
     3次受益者(または残余財産帰属者)=長男等 

 


高齢者同士の再婚を考えているが、子供たちが反対している

、⦅⦆妻と死別してから一人暮らしが始まり数年が経ちました。先日、あることから知り合った女性と意気投合し、お互い再婚を考えています。その話を子供たちにしたら、猛反対されました。自宅とわずかな預金程度で、私には大した資産はありませんが、それらが再婚相手に行くことに子供たちは抵抗があるようです。

仮に、私が先に逝った場合は妻には生涯自宅に住んでもらいたいと思っており、妻もそれを望んでいます。妻が亡き後は、子供たちに遺った遺産を相続してもらいたいと考えています。

 

 

自宅不動産を信託財産として、委託者兼当初受益者をご主人、2次受益者を再婚相手の方、受託者をお子さんとして、不動産をお子さん名義にします。当初受益者はご主人ですので、名義がお子さんでも使用収益権はご主人にあり、再婚相手の方と幸せな毎日を送っていただけます。

また、ご主人亡き後は、再婚相手の方が2次受益者として自宅を使用する権利がありますから、生涯、誰に気兼ねすることなく生活を送ることができます。

再婚相手の方が亡くなった場合は、権利(受益権)をお子さん方が取得するように設定しておくことにより、ご主人のご自宅は、ご主人→再婚相手の方→お子様方と引き継がれることになります。
(この場合、遺留分について当事者の方によく理解していただくことになります。)。

 

なお、こちらの事例もご覧ください。

 

 

委託者(ご主人) ⇒ 受託者(お子さん)

      ↕↕       

当初受益者(ご主人)  2次受益者(再婚相手) →3次受益者(お子さん方)

 

※再婚相手からお子様方への承継は、相続ではなく、遺贈として不動産取得税が課税されます(自宅だけの場合、⦅茨城県では滅多にありませんが⦆、相続税課税対象の場合は2割増加算となります)。

 

 


信託成立後、追加で財産を信託することはできますか?(追加信託について)

家族信託を開始して一定期間が経過してから、追加で金銭等を信託財産に加えることがあります。例えば、委託者である父親が、当初はある程度の現金、預金をご自身で管理することを望んでいたが、徐々に判断能力の低下がみられたことにより年金が入る口座以外の現金、預金については、信託財産に入れるケースなどです。

 

追加信託について信託法上明文の規定はありませんが、信託法の立法段階で議論されており、当然に認められるものであると考えますし、また、信託契約書にその条項を入れておくのが一般的です。

 

私見ですが、金銭を追加信託する場合は、通常は信託口口座に振り込む方法によりますから、追加で信託財産となったこと及び金額や日付は明確であると思われますが、後日の紛争防止等のため下記のような覚書を作成し、信託契約書と一緒に保管することをお勧めしています。なお、覚書には公証人の確定日付は入れておきたいところです。

ちなみに、不動産を追加信託する場合は、受託者名義に所有権移転登記及び信託の登記することになります。

 

                                                        覚 書

                                            印紙200円

 
委託者(兼受益者)つくば花子(以下「甲」という。)と受託者茨城一郎(以下「乙」という。)は、平成○○年○月○日付信託契約書(水戸地方法務局所属○○公証人 平成○○年第○○号、以下「原契約書」という。)について、次のとおり追加信託を行い、本覚書を取り交わす。

 

  1. 甲は、原契約書第○条の規定に基づき、金○○万円を追加信託し、本日、同金額を受託者名義の信託口口座(○○銀行○○支店 普通預金 口座番号1234567)に振込む。
  2. 乙は、1により追加信託された金銭を原契約書第○条の規定により、受託者として管理・運用を行う。
  3. 上記以外については、原契約書及び信託法の規定に従う。

 以下、略

  

平成○○年○○月○○日

 

委託者(兼受益者)

 茨城県つくば市…・

  つくば 花子 ㊞

 

受託者

 茨城県つくば市…・

  茨城 一郎 ㊞


1人暮らしの母親の振り込め詐欺被害が心配である

ご相談
遠方に住む母親とは定期的に電話連絡をとっており、電話の声はとても元気で病気もほとんどしないようですが、最近は耳も遠くなり、衰えは隠せません。母には父親が遺した退職金等まとまった金額の預金通帳を管理していますが、振り込め詐欺などに遭わないかとても心配です。

 
回答

平成29年の振り込め詐欺等の特殊詐欺被害は全国で390億円を超え、特にオレオレ詐欺被害は毎年増加傾向にあり、1件当たり被害額は240万円を超えています。その被害者の大半が65歳以上の高齢者です。

 

家族信託は、高齢者の財産を管理することが大きな目的の一つですから、当然、振り込め詐欺に限らず、高額の消費者被害等の対策にも役立ちます。

 

現在、お母様が管理している預金口座を信託口口座としお子さんが受託者として管理し、必要に応じてお母様に給付したり、お母様についてまとまった出費が必要なときは、受託者(子)が預金を引き出してその支払いに充てたりします。

 

お母様はお元気なのですから、年金が振り込まれる口座はそのままお母様が管理され、日々の生活費に充てていただければいいでしょう。


浪費癖のある息子のための家族信託


ご相談事例

私は年金暮らしの70歳の男性です(Aさん)。浪費癖のある次男と2人暮らしです。

財産は、自宅の土地、建物(評価額900万円)と800万円程度の預金があります。次男はアルバイトで収入は少なく、給料をもらってもパチンコですぐに使い果たしてしまっているようです。たまに金の無心をされますが、本人のためだと思って心を鬼にして断っています。

私の死後は、次男が相続した分の預金をすぐに使い果たし、自宅も担保に取られて失ってしまうのではないかと心配です。それでも、次男を見捨てることはできません。

なお、長男は結婚し子供もおり、家も建て真面目に働いています。

 回答
ご相談のケースは、何もしないでご相続が開始しますと、ご長男と次男の方で遺産分割協議をしていただくことになります。また、遺言により誰がどの財産を相続するか、あらかじめAさんが指定することもできますが、いずれにしても、次男の方が一度に財産を手に入れることになり、ご心配されているようなことが起きかねません。

そこで、家族信託のご検討をされてはいかがでしょうか。委託者兼受益者をAさん、受託者をご長男として不動産を信託財産としてご長男名義にします(受益者がAさんとなりますので、もちろんAさんはそこに住み続ける権利を失いません。)。800万円の預金も信託財産としてご長男が開設した信託口口座に入金しますが、Aさんがお元気なうちはご自身で管理されてもいいと思います。

また、Aさんに相続が開始した場合の2次受益者を、ご長男とご次男とすれば(受託者はご長男のまま)、信託契約に特定の規定を設けることにより、ご次男が不動産を担保に入れたり処分したりすることをできなくさせた上で、ご次男がそのまま自宅に住み続けることをできるようにすることができます。

さらに、必要に応じて最低限度の生活費の給付を、受託者である長男から次男にすることで、計画的な生活を営む習慣をつけてもらい、早期にギャンブル等の浪費等とは決別していただきます。
(※ 受託者である長男は、次男の財産管理をする対価として信託契約書に条項を設けることにより、信託財産から一定の信託報酬を受け取ることも可能です。)


なお、ご次男が生涯独身だった場合(相続人がいない場合)、ご次男に遺された不動産等の権利は、ご長男(又はその子等)が信託契約により(または通常の相続として)取得することになります。

 
委託者(父 Aさん) ⇒受託者(長男)

    ↕↕              

受益者(父 Aさん) → 2次受益者(長男)  

          → 2次受益者(次男) 

          
3次受益者(または信託終了により) → 残余財産は長男の子に